ユギョオヤナギ
遊行柳

 遊行上人が上總國から陸奥へ向かひ、白河の關を越えて、街道をむかうとすると、一人の老翁が現れて、先代の遊行上人が通った古道へと誘ひ、路傍の柳を、あれが朽木の柳といふ名木だとヘへる。そこで上人がその由來を訊ねると、昔西行法師が其處で、道のべに清水流るゝ云々の歌を詠んだ木であると語り、その後で上人から十念を授かったが、軈て朽木の柳のあたりに消え失せる。
 その夜上人が念仏を唱へてから假寝をしてゐると、朽木の柳の精が白髪の老人姿で現れ、十念を授かった爲に、草木ながら成佛が出来ると喜び、柳に因む和漢の故事を語り、また報謝の舞を舞ったりしたが、頓てその姿を消す。

曲柄:三番目
季節:九月
等級:九番習




 
 

 
   
    
  
 
 
   
   
   
   

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