ヨシノテンニン
吉野天人

 毎春千本の櫻を見る事にしている都の者が、今年は吉野の花を見ようと若い仲間と共に吉野山の奥深く分け入ると、高貴な姿をした女が現われる。都人達が怪しんで尋ねると、この辺りに住む者で一日中花を友の様にして暮らしていると答え、都人達と一緒に花を眺めていたがいつまでも帰ろうとしない。都人達が不審がると、実は私は天人で花に引かれて来たが、今宵ここで旅居して信心なさるなら古の五節の舞を見せようと云い捨てて消え失せる。
 やがて夜になると虚空に花降り音楽が聞こえ、姿も妙なる天人が飛び下り花に戯れ舞を舞っていたが、再び花の雲に乗って消え失せる。

曲柄:三番目
季節:三月
等級:五級


古の五節の舞は、天武天皇が吉野に行幸遊ばされた時に、天人が天降って袖を五度飜して舞ったという舞。



 
 

 
   
    
   
   
   
   
   
   

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