ウトオ
善知鳥

 この世の果て、地獄の入り口と信じられていた越中の立山で禅定を終えた旅僧が山を下りてくると、一人の老人が現れ、陸奥へ下るのであれば去年の秋に死んだ外濱の猟師の家を訪ねて蓑笠を手向ける様に伝えて欲しいと懇願し、証として着ていた麻衣の袖を解いて渡し消え失せる。
 僧は猟師の遺族を訪ね妻子に亡者の伝言を語り、預かって来た麻衣の袖を渡すと死んだ猟師の衣と一致する。そこで蓑笠を手向けて弔っていると、先の老人が猟師の亡霊となって現れる。
 亡霊は、士農工商の家にも生まれずただただ殺生せざるを得ない境遇のうちに、その殺生を楽しみにした因果を嘆く。
 更に鳥を取る様を物語る。雛鳥を隠そうとした親鳥の声をまねて「うとう」と呼ぶと、雛鳥は「やすかた」と答えるので共に殺される親子鳥。この時親鳥は空から血の涙を降らせるので濡れない様に蓑笠に身を隠す。
 しかしながら、地獄では化鳥となった鳥が逆に目玉をえぐり出したりなど、救いのない業火となって猟師を責め立てる様を物語り、僧に助けを求めながら消え失せる。

曲柄:四番目(略二番目)
季節:四月
等級:三級



 
 

   
     
   
   
  

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