ウカイ
鵜飼

 安房國清澄から甲斐の國行脚に出かけた僧達が石和川岸辺の堂に泊まっていると、鵜飼の老人が鵜を休める為に立ち寄る。
 従僧がこの老人は二三年前にこの辺りを通りかかった時に家に連れ帰って接待してくれた鵜飼に似ていると言う。
 老人はその鵜飼は殺生禁断の川で漁をしたために殺されたと語り、自分がその亡者であると告げ、懺悔のために僧達に鵜飼を見せる。暗がりに輝く篝火、水底は明るく照らされ次々と魚を喰う鵜、その面白さに鵜使いは殺生の罪を忘れて興じるが、再ぴ闇路へと消え失せる。
 僧が法華経の文句を一石に一字ずつ書き、それを川に投げ入れ回向すると、やがて閻魔大王が現れ、この鵜飼は罪業の為に地獄に堕ちるはずであったが、かつての僧への善行(接待)と法華経の功徳によって極楽へ導く事になったと告げる。

曲柄:五番目
季節:五月
等級:四級

 鬼の中にも、鬼神と地獄の真の鬼の区別があり、ここでの鬼は地獄の鬼である。
 従って、本来ならば強くて恐ろしげな勢いで表されるが、此の鬼は罪人を責めようと現れているのではなく、法華経の功徳によって救われた罪人を却って極楽へ送る為に現れている。
 ワキの僧が日蓮である事を仄めかしているとの解釈も有る様である。



 
  
  
 

 
   
    
   
   
 

Return