ツルカメ
鶴亀

 新春の支那の朝廷では、四季の節会の事始めとあって皇帝が月宮殿へ行幸して鶴亀の舞やその他もろもろの御遊が催されるので、みな宮中に参内せよとの御布令が出される。
 儀式はまず皇帝が不老門にお出ましになり、宮殿に参内した人々がひしめき皇帝に拝礼する声は天まで響く勢いとなる。宮殿の荘厳華麗な光景は蓬莱山の仙郷を見るが如きである。
 やがて大臣が君の御前に伺候して毎年の嘉例として鶴と亀とに舞を舞わせ、それが済んだら月宮殿において舞楽を遊ばすようにと申し上げる。池の汀にいた長寿の象徴である鶴と亀は庭上にならんで舞を舞い、千年万年の長寿を君に捧げて祝う。皇帝は大いに喜び、御自ら立って舞楽の秘曲を舞う。山河草木、国土万民をあげて、太平の御代の幾久しく栄え給えとよろこび謳う声々のうちに皇帝は長生殿に帰って行く。

曲柄:初番目
季節:正月
等級:五級

 シテの皇帝が誰であるかは不明であるが、唐朝の第二代皇帝太宗の建てた長生殿の名がみられ、また鶴亀の別名を「玄宗」と称す事もあり、玄宗皇帝を暗示しているとも推測できる。
 そうすると時は八世紀の始め、唐朝の第六代皇帝である。治世の前半は開元の治と呼ばれる善政で唐の絶頂期を演出したが、後半は楊貴妃を寵愛したことで安史の乱の原因を作ったとされる。



 
 

    
    
     
     
  

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