テイカ
定家

 北国方の僧が晩秋の都へ上り、枝に残る紅葉を愛でていると、にわかに時雨となる。
 雨宿りの軒へ身を寄せると、一人の里女が現われてここはかつて定家郷が時雨を好んで建てた「時雨の亭」であると教え、かの菩提を弔うことをすゝめる。
 そして里女は僧を式子内親王の墓所へ誘い、定家の恋慕の執心が蔦葛となって墓石に這いまとっている定家葛の謂われを物語り、その葛で苦しむ邪婬の妄執を救って欲しいと回向を所望して墓の中へ消え失せる。
 辺りの人より二人の恋の物語を詳しく聞いた僧が、数珠を手に法華経の薬草喩品を誦えて弔っていると、式子内親王の霊が現われ僧の回向に報恩し、昔のように美しい姿ではないがとして舞を舞ってみせる。
 しかしそれも夜の契りで明けるのを恥じてまた墓石に帰ると、再び定家葛に這い纏われ形は埋もれて見えなくなる。

曲柄:三番目
季節:十一月
等級:九番習



 
 

 
   
    
  
  
  

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