ミワ
三輪

 大和国三輪山で庵室をかまえ山居している玄賓僧都のもとへ、毎日樒と閼加の水を運んで来る女がいる。ある日、女が秋の夜寒をしのぐ衣を一重頂けないかと請うので玄賓が快く衣を与え住居を尋ねると、女は「我が庵は三輪の山本恋しくは訪い来ませ杉立てる門」と古歌をひいて杉立てる門を目印に訪ねる様に言い残し、姿を消す。
 玄賓が女の言葉を頼りに三輪明神の近くまで来ると、二本の杉の枝に先程女に与えた衣が掛かっており、その裾に一首の歌が記されている。不思議に思い読んでいると女姿の三輪明神が現れ、三輪山の杉にまつわる神話を語ったり、神楽を奏して天の岩戸の神遊の様を示したりするが、夜明けになって神姿は玄賓の夢のうちから消え去る。

曲柄:四番目
季節:九月
等級:三級

 樒(しきみ)は、仏前草とも呼ばれ葉と樹皮から線香が作られる。
 天照大神が岩戸に隠れ常闇の世となった時に、八百万の神々が談合して神遊びをしたのが神楽の始まりとされている。また、三輪山の麓に山居した玄賓僧都の姿は、そうず(案山子)に似たとも、案山子そのものが玄賓の創案になるとも言われている。



 
 

 
   
 
 

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