メカリ
和布刈

 長門國の早鞆明神では、毎年十二月晦日の寅の刻に神主が海底の和布を刈る神事が行われる。
 その当日漁翁が蟹少女と共に神前に供物を捧げ、神事の準備をしている神主へ昔~話時代にいかにして人間界と龍宮界の交通が開かれたか、また、いかにしてそれが閉ざされたかを物語る。
 それ迄は彦火々出見尊が海神の娘豊玉姫と契り海陸の隔てがなかった。しかし、産期に姿を見ないようにとの姫との約束に背いて尊が御産を隙見したので、姫は龍宮に帰ってしまい往来海陸の交通が絶えてしまった。この和布刈の御神事では、龍神が蒼海を陸路に變ずるのであると語った後、蟹少女は天女となり雲に乗って去り、漁翁は波の中に消え失せる。
 軈て龍女が現れて舞を舞い、神事の時刻となり龍神をさし招くと忽ち雲が湧き雨が煙る中にけだけだしい龍神が現れ、海水を左右に追いのけて海底に平坦な路を開く。その上を神主が松明を振りかざしながら進み和布を刈り戻ると、海は再び元の荒海となり龍神は龍宮に飛んで入る。

曲柄:一番目
季節:十二月
等級:三級


 「玉井」では彦火々出見尊が龍宮で三年過ごした後に地上へ歸るが、「和布刈」はその後となる。



 
   
 

 
     
      
     
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