マツムシ
松虫

 摂津の国(大阪府)阿倍野の市で酒を売っている者の処へ、いつも大勢で来ては酒宴をして帰る男達がいた。 ある日、酒に興じている一人が「松虫の音に友を偲ぶ」と言ったので謂われを聞くと、昔この阿倍野の原を親しい友人と二人で通っていたが、友人は松虫の音に心を引かれて草むらの中に入って往きそのまま死んでしまい、泣きながら死骸を埋めたが今でも死んだ友を慕って松虫の音に誘われて現れるのだと打ち明け、市に集まる人影に紛れ立ち去る。
 そこで酒売りが弔っているとその男の亡霊が現れて弔いを喜び、友と酒宴をして愉しんだ思い出を語り虫の音に興じて舞うが、夜明けとともに名残惜しみながら姿を消し、あとに残るのは虫の音ばかりとなる。

曲柄:四番目
季節:九月
等級:一級



 
 

  
    
  
  
 

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