ゲツ
花月

 筑紫彦山の麓で左衞門というものが一人の男の子と暮らしている。その子が七歳になった時行方不明となり、左衞門は出家して行方知れずになった我が子を訪ね諸国を行脚する。
 ある年の春清水寺に詣ると、花月と名告る喝食が来て小歌を謡ったり花踏み散らす鷹を狙い興じ、寺の縁起を曲舞にして舞謡う。僧はこの少年が我が子であると心附き自分が親である事を告げると、花月は喜び天狗にさらわれ山々を巡った様を舞い見せる。その後で親子は一緒に修行の旅に出かける。

曲柄:四番目
季節:二月
等級:三級

 喝食は本来、禅寺の食堂で食卓に侍して諸般の命令を大声で傳達する役目の少年で、禅学修行の候補生の様なものである。禅門ではカツジキと称されるが、能ではカッシキと呼ぶ。能のカッシキは禅門の場合と少し異なり、専ら遊狂の青年または少年となっている。身分は禅門の修行者で、中には既に居士となっているものもある。



 
 

  
  
  

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