カナワ
鐡輪

 他の女を妻とする為に自分を捨てた夫を怨み、下京の女が貴船の宮に丑の刻詣り(憎らしい相手の人形に五寸釘を打ち込む古代の風習)をしている。女は、ある夜ここの社人から、赤い衣を着て顔に丹を塗り、三本の脚に火を燃やした鐵輪(五徳)を頭に戴いて憤怒の心を持てば、望みのまま鬼になれると神のお告げを傳えられ、その決心をして家に帰る。
 この女の前夫は近頃続いて夢見が悪いので陰陽師(祈祷師)安倍晴明を訪ねて占ってもらうと、女の怨みが深く命も今宵限りであろうと判ぜられ、驚いて祈祷してもらう。
 その晴明宅へ女の生霊が鬼形となって現れて怨みの数々を述べた後、臥した夫の枕に寄り「命は今宵ぞ」と後妻の髪を掴んで打ち据えるが、晴明の懸命な祈祷によって祭壇に祭られた三十番神に追い立てられ、神通力をも失い、再び時節を待とうと捨て台詞を言い残し鬼になって消え失せる。

曲柄:四番目
季節:九月
等級:三級



 
  
  
 

 
   
    
  
  
  

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