ハンヂョ
班女

 美濃國野上の宿の遊女花子は、東国に下る途中に宿に泊まった吉田少将と契ってからお互いに形見として取り交わした扇にばかり見入って引き籠もり、他の客とは逢おうとしなくなりついには宿の長から追い出される。
 その秋、東国からの道すがら約束どおり再び野上に来た少将は、花子が追い出されたことを知るが行方が分からず、そのまま都に帰り下賀茂神社へ参詣する。
 すると班女と呼ばれる若い狂女が現れ、恋人の扇を胸に抱いて募る恋慕や捨てられた悲しみ、独り寝の寂しさを語り舞を舞う。
 やがてこの女こそ花子と気づく少将。従者が狂って見せよと言うと、無情な事を仰有るなと言って思慕の情の切なさを述べるうちに、次第に心が乱れついに形見の扇を取って狂おしく舞う。
 その扇から花子である事が判り、少将は花子と夫婦の契りを結ぶのである。

曲柄:四番目(略三番目)
季節:七月
等級:二級

 「班女」は、後漢の頃に帝の寵を失った我が身を秋が来ると不要となり捨てられる「秋扇」に基づいている。
 賀茂の末社には橋本と岩本の両者が有り、それが男女の願を叶えて縁を結ぶ神だと言われている。
 扇は寵を失った女の象徴で、表裏あるものとして人の心をも表す。また、扇は「逢ふ儀」から男女の仲の契りも示唆する。



 
  
  
 

 
   
    
 
  
   
   
   

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