フナベンケイ
船辨慶

 源義経は平家を滅ぼして兄頼朝と仲睦まじく過ごせるはずであったが、つまらぬ者の讒言で不和になり、都落ちを決意し弁慶ら一行と大物(だいもつ)の浦へやって来る。
 義経は愛妾の静を同行しているが、時節柄相応しくないから都へ返す様にとの弁慶の助言により、静にその旨を伝える。静は、「波風も静を留め給うかと」と「静」の名前が船旅の門出には縁起がよいのにと嘆き悲しむが、別れの盃を受け、気丈に別れの男舞を舞う。
 静御前との名残惜しい別離を済ませ船出すると、穏やかな日和が急変し激しい暴風雨となり、義経に滅ぼされた平家一門の亡霊が波間に姿を現す。中でも平知盛の怨霊は、義経を海に沈めてしまおうと長刀を振り回しながら悪風を吹きかけ、狂気の如く襲いかかってくる。義経は怯まずに立ち向かうがらちがあかず、辨慶の懸命の祈祷により不動明王をはじめとする五大尊皇の力を得、やがて夜が明ける頃怨霊は退散する。

曲柄:五番目
季節:十一月
等級:四級

 船辨慶での別れの地は能作者の虚構で、史実では大物浦を出航後吉野山を越える際に別れており、「二人静」での舞台設定がより史実に忠実。



 
   
   
 

  
    
     
 
 
 
 
    
    
    

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