エグチ
江口

 旅の僧が、その昔西行法師が雨宿りをしようとして遊女に宿を借りようとしたが貸さなかったので、「世の中をいとふまでこそかたからめ仮の宿りを惜しむ君かな」の和歌を送った、江口の里を通りかかる。
 僧がこの西行の和歌を口ずさんでいると若い女が現れ、どうしてその西行の歌に対する遊女の返歌を詠じないのかと問う。
 遊女の歌は「世をいとふ人とし聞けば仮の宿に心とむなと思ふばかりぞ」という詠歌であり、西行が遊女の宿という「仮の宿り」に執着していることをたしなめた歌であった。
 若い女は、僧に対し、自分がその昔の江口の遊女であると述べて姿を消す。
 旅の僧が所の者に先程の若い女の様子を述べると、所の者はそれは江口の遊女の幽霊が仮に現れ僧と言葉をかわしたのであり、遊女は本体が普賢菩薩でありその姿を現すであろうから、夜もすがら弔うと良いと勧めて去る。
 僧が川沿いで一晩中弔っていると遊女が船で現れ、遊女の生活のはかなさと罪深さについて歌い普賢菩薩という本体を明らかにする。
 そして船は白象に、自らは普賢菩薩として天に上って行く。

曲柄:三番目
季節:九月
等級:一級



 
 

  
   
    
     
    
    
   
   
   
    
    

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