アマ
海士

 母が讃州志度の浦で死んだ蜑女であると知り、大臣藤原房前が亡母の十三回忌法要の為に志度の浦に赴くと、一人の蜑女がやって来て海の底の物語を語る。
 唐の高宗の妃となった淡海公の妹が氏寺の興福寺に三種の宝を送ったが、その中の明珠を志度の浦沖で竜宮の者に取られてしまう。淡海公はこの浦で奪われた明珠を探している内に、蜑女と懇ろとなり一人の子を授かる。蜑女は淡海公から竜宮から珠を取り戻したらこの子を世襲にする約束を取りつけ、海底に飛び込む。底知れぬ海中を深く潜っていくと、やがて竜宮に到る。珠は三十丈の玉塔に籠められ、周りには守護神の龍や鰐がいて守っており、珠を取りに入れば命はない。蜑女はただ息子の幸せを願い、覚悟を決めて竜宮に飛び込み珠を奪うが、守護神の龍や鰐などが執拗に追いかけて来る。守護神達が血の臭いを嫌う事を知っていた蜑女は、自ら乳房の下を掻き切り珠を押し込め、最後の力を振り絞り手はず通りに体に結わえた縄を動かし引き上げられる。息も絶え絶えの蜑女の言うとおり乳の中から珠が出てきて、息子はこの浦の名前にちなんで房前の大臣と名前をつける。
 やがて蜑女は自分が母の蜑女であると告げ、回向を願って波の底に消え失せる。
 房前が追善供養をしていると母の蜑女が龍女となって現れ、法華経の功徳で成仏出来る事を喜び、志度寺と名づけられたこの地は法華経の霊地となる。

曲柄:五番目(略初番目)
季節:二月
等級:三級



 
 

  
    
     
   
   
    
    
    

Return