RICOH GR DIGITAL

RICOH GR DIGITAL
RICOH GR DIGITAL(ジャンク品入手)

 銀塩時代からなじみ深いリコーのGRデジタルシリーズ、鴨撃ち趣味の企画マンによる「猟場で撮影するためにジャケットの胸ポケットに入る様な広角レンズが付いた小型カメラ」[7]との市場リサーチとは全く無縁なR1に端を発しているとの事で、GR1Vを傍らにしながら先輩諸氏のGRD評に心を動かされていた。銀塩シリーズ初代R1はデザインに惹かれてジャンク品を手に入れ、手のひらにシックリと馴染むと感じつつ中身をいじり尽くしたりもしていた。GRデジタルシリーズは分解方法解説を目にする事も多く、ワクワクしながらどんな写りがするのかと長い事思い続けてきた。

 金環食の年の猛暑が過ぎ去った頃に、「SDカードに書き込みできません。撮影設定を初期化しても電源を入れ直すと勝手に設定が変わってしまいます。ADJ長押しでフリーズします。部品取りにどうぞ。」と云う代物がやって来た。GRDはジャンク品でも高騰気味にもかかわらず、5コインであった。

 とても綺麗な筐体に感激しつつ、早速のゴシゴシ大作戦。さすがにマグネシウムダイキャスト製筐体は本物感が漂っている。使い込んだ様子がうかがい知れるグリップ部分にはベタベタ感が生じている。素材がゴムの様でもある事だしと、いつもの車用ゴム部材再生シリコン系スプレーの液剤を塗ってみると違和感が無くなった。

 さて、動作状況はと。起動、レンズ動作や焦点周りに異常無し。内部メモリには問題なく記録できるので、撮影再生系統は正常と判断。で、やはりSDメモリカードには記録できない。SDカードへの情報伝達に難有りと云う事で、まずは接触不良を疑い、接点改善のためにSDカードをメモリスロットへ出し入れする事50回以上。ムムム、書き込めそう。

 部屋の中で試写した数枚を見てみると、深みのある写り込みに引き込まれてしまう。さすがに噂のGRレンズとエンジンとの感慨。どんどん撮りたくなる感覚が湧いてくる。銀塩以来の久々の感覚。無事不調箇所が手当てできて、このGRDで撮りまくれる事を願うばかりである。

 GRDにはダイアルが3箇所、その内のアジャスト(ADJ)ダイアルが効かなくなり、時には本体内部のCPUが気絶してしまう持病があるらしい。今回入手品の症状は正にこの持病と思われる。これまでも様々な創意工夫で驚かされる事が多かった先輩諸氏には強者が多く、このADJダイアル起因の故障を分解清掃で直した方々がおられる。

ADJスイッチ清掃挑戦中
ADJダイアル清掃挑戦中

 それでは私も挑戦せずにはおられない。まずは軍艦部の解体。隠しネジがあるグリップ部分を筐体からベリッと剥がす必要がある。グリップ接着に使用されていた両面接着テープは茶色に変色、粘着力が弱まっていたので全て除去。コンパクトディジカメを弄ってきた者にはやけにハンダ付け部分が多い造りと思われる。銀塩カメラ末期を連想。時代的には正に銀塩からディジタルへの渦中止む無しか。ADJダイアルモジュールのハンダ付けを取り外してダイアルそのものを解体、中の接触端子部品を清掃して再組み付けする強者もおられるが、構造を見て二の足を踏んでしまった。

 ヘッド装着型ルーペでよくよく見ると、ダイアル二分割組立構造のロック部分を外せば、少しだけなら開けられる事が判明。ロックを慎重に外して、マイナス時計ドライバーを差し込み分割部分を2ミリ程度開けて、個人的に電気系接触改善に効果があると確信、別掲 VICTOR AX-F1 のボリューム修理でも記載、常用しているCRC-556の液滴を最細マイナス時計ドライバー先端に付けて内部へ滴下。その後ダイアルをグリグリと回転、更にもう一つのアクションたるプッシュを繰り返し、内部の接触子の洗浄と接触改良を図る。この作業を繰り返す事数度。頃合いを見計らって、軍艦部の再組み付け。

 グリップ未接着のまま電源を入れて、手荒にADJダイアルを何度も何度も弄りまくるもCPU気絶無し。設定を色々変えて延々と弄ってみたが、正常に作動している。これなら撮り倒せそうである。その後グリップ裏面全面に両面接着テープを貼り並べてから筐体側へ密着。数枚試写した連番からすると、これまでの撮影枚数2400枚程度の様である。最後の仕上げとして、用意していた最終バージョンのファームウェアを入れ換えるべく内蔵バージョンを確認するも、既に最終バージョンが入っている事が判明した次第。

 GRDは自分の操作感にぴったりと感じている。アップダウンダイアルとADJダイアルで露出補正、ホワイトバランス、ISO感度、画質・サイズ、フォーカス、画像設定、測光方式、オートブラケット、連写、音声付き撮影が自在に変更できるのである。また、撮影時F値とシャッタースピードを任意に設定できるのは実に楽しい。手動焦点調整もダイアルでグリグリと操作でき、一眼やミラーレス一眼のレンズによる焦点合わせ操作や、コンパクトディジカメのズームスイッチ(シーソースイッチ)による手動焦点調整操作とは異なり、なかなかに面白い。また、使用できる電池の種類が多いのは驚き。専用充電池以外に、単四乾電池(アルカリ、オキシライド、ニッケル水素)が使用できるのだ。筐体電池室の構造は共用のためのトリック状態。デジタルの電池切れは致命傷であり、対応策としてそこまでやるかの意気込みに感嘆。


銀塩&ディジタル
銀塩&ディジタル

 金環日食翌年の我が地方にも黄砂が降り始めた頃、カミさんの友人に会うべく屋台並ぶ街へと出かけた。ここぞとばかりにGRDを随行、レンズ試写チャートよろしく1枚宵の時間帯に1枚、三脚無しである。巷の評判に違わない描写に驚嘆至極。彼の地では花見の宴がチラホラ。


[1]使うリコーGR、田中長徳、双葉社、クラシックカメラ Mini Book Special issue
[2]悦楽GR、青山祐介、株式会社竢o版社、笊カ庫
[3]無手勝流GR1読本、田中長徳、株式会社アルファベータ、カメラジャーナル BOOKS 4
[4]GR DIGITAL パーフェクトガイド、デジタルフォト責任編集、ソフトバンククリエイティブ株式会社、ソフトバンク MOOK
[5]GR DIGITAL パーフェクトガイド vol.2、デジタルフォト責任編集、ソフトバンククリエイティブ株式会社、ソフトバンク MOOK
[6]GRデジタルワークショップ、田中長徳、株式会社竢o版社、エイムック1236
[7]GRデジタルワークショップ 2、田中長徳、株式会社竢o版社、エイムック1483
[8]GR DIGITAL BOX、森山大道他、東京キララ社

Return