NIKON Nikomart-EL

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NIKON Nikomart-EL(ジャンク品入手)

 故障 Nikomart-FTN を修理すべく、部品取りジャンク FTN を入手した時に一緒に付いてきたのがこの EL である。通称「ガチャガチャ」のピンが取れており、部品取りジャンク FTN のピンでも使って再生して下さいと譲ってくれた方に感謝。

 製品系列としてはシャッタースピードと絞り値が電子化され始めた頃と思われ、手動で絞りを決めると、後は電気的に明るさに比例してシャッタースピードが自動的に設定される方式(絞り優先)である。調べてみると発売は1972年で、手持ちの CANON AE-1(1976年発売)と同時代を感じるカメラである。

 状態としては、ピンが取れている以外にファインダー内に細かなゴミが多数見られる程度で、メーターや電子化されたシャッターもそれなりに明るさに反応している。ゴシゴシ清掃後、さっそく部品取り FTN からピンを外すべく取りかかって見るも、ピンとリングのハメ合いが頑丈で苦闘。何とか外したピンを EL 側へ合わせてみると、穴がスカスカでハメ合いどころではない状態。EL のピンは無理にむしり取られた様子で、穴が大きくえぐられていた。穴をキツくすべく、鉄ブロックの上で小型金槌でコンコンと穴をならすと今度はキツ過ぎてしまう始末。それではと穴を極細ヤスリで削ると、今度は心持ち緩めとなる。これ以上の調整は不可能と断念し、ピン挿入後二液混合型エポキシ系接着剤で穴の周りを固めて保護。予想以上に強固な仕上がりとなり、「ガチャガチャ」は無事機能復旧と相成った。その後モルトを交換して、一緒に付いてきたカビレンズをクリーニング(別掲FTN参照)。

カップリングピン
エポキシ接着剤固着カップリングピン

 さて、ファインダ内の付着微細ゴミであるが、軍艦部(上部カバー)を外してアイピースや場合によってはペンタプリズム等を清掃すれば良いと思われ、手に入れた部品図を元に解体開始。・・ところが、シャッターのダイアルカバーリングが外れない。入手した資料によると EM や FM は割と簡単に外れそうなのに、なにやらすんなりとは行ってくれそうもない。ネット情報には EL 解体手順が見つからず、二日間挑戦するも敢え無く断念する羽目に。ファインダ内のゴミ以外はほとんど正常と自分を納得させている。どなたか、分解手順の御指南を。

ダイアルカバーリング
外せないダイアルカバーリング



悦楽の思い

 カメラが電子化され始めた時代の製品として、CANON AE-1 と偶然にも NIKON Nikomart-EL に巡り会えた。絞りか、シャッタースピードか、何れかを手動設定し他方を電気制御したのがこの頃の手法であったと思われる。ニコンは絞り手動設定(絞り優先)、キャノンはシャッタースピード手動設定(シャッタースピード優先)を選択した。両者同じ土俵には上がらなかったと興味深い。

 1972年発売の Nikomart-EL は、測光制御回路にICが使用され、1976年発売の AE-1 には初のマイクロチップ採用とある。それまでの機械式シャッター機構や、機械式絞り機構を電子測光により得られた情報によりマグネット経由で電気制御する構造である。EL 以前の測光系のみが載った機械式カメラは、電力消費が比較的大きなマグネットによる機械駆動部が無く、従って電池もボタン電池1個で済んでいた。一方、EL や AE-1 では機械式機構部を駆動するマグネットがあり、電池もボタン電池4個積層型の4LR44(又は4SR44)が必要とされる。EL と AE-1 から、機械式カメラの電子制御に至る変遷が見て取れる。


[1]カメラと戦争、小倉磐夫、朝日新聞社、朝日文庫
[2]ドイツカメラの本、佐貫亦男、株式会社小学館、小学館文庫
[3]ライカ解体新書、田村彰英、成美堂出版、SEIMIDO MOOK
[4]ライカとモノクロの日々、内田ユキオ、株式会社竢o版社、笊カ庫
[5]ライカ解剖学、大西真一、辰巳出版株式会社、タツミムック
[6]ライカ通の本、円谷円、株式会社小学館、小学館文庫
[7]中古カメラ屋通の本、円谷円、株式会社小学館、小学館文庫
[8]ノスタルジックカメラマクロ図鑑ポケットvol.3、押江義男、株式会社ネコ・パブリッシング、NEKO MOOK 62
[9]使うリコーGR、田中長徳、双葉社、クラシックカメラ Mini Book Special issue
[10]悦楽GR、青山祐介、株式会社竢o版社、笊カ庫
[11]無手勝流GR1読本、田中長徳、株式会社アルファベータ、カメラジャーナル BOOKS 4
[12]絶対ニコン主義!、マニュアルカメラ編集部編、株式会社竢o版社、笊カ庫
[13]往年のキャノンカメラ図鑑、マニュアルカメラ編集部編、株式会社竢o版社、笊カ庫
[14]スローカメラの休日、田村彰英、株式会社竢o版社、笊カ庫
[15]120%オートハーフを楽しむ本、Ryu Itsuki、株式会社竢o版社、笊カ庫
[16]ハーフサイズカメラ道楽、飯田鉄+良心堂、株式会社竢o版社、笊カ庫
[17]ソビエトカメラ党宣言、中村陸雄、原書房
[18]Fantastic Camera Gallery、http://fantastic-camera.com/
[19]やさしいカメラ修理教室、大関通夫、株式会社朝日ソノラマ、クラシックカメラ選書 20
[20]ジャンクカメラの分解と組立に挑戦!、水滸堂ジャンクカメラ研究室、株式会社技術評論社

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