DC202L-AF

DC202L-AF
DC202L-AF(コンバージョンレンズ群)

 正月早々の大地震報道の中、ネットで郷愁に駆られる出で立ちのディジタルカメラを見かけた。DC-202Lである。別掲で述べたがカメラ遍歴は小学校高学年の16ミリフィルム使用オモカメからで、中学の修学旅行に借り物の小型レンジファインダーカメラを携えていったものだった。たしかヤシカだった気がする。DC-202Lにはファインダーが付いていて雰囲気を醸し出しており、思わず虜になってしまった次第。先達の方々からは、FUJIFILM X100シリーズをモデルにしているのではないかとの所見も見られている。

 最近巷ではこの類いはトイカメやオモカメの上位機種的に捉えられているきらいがあるが、中には格安本格ディジカメとして購入なさってのレビューも散見されている。色々なタイプが出回っている様で、ペンタプリズムを模した一眼ディジカメ風のものや、ミラーレスディジカメ風、コンパクトディジカメ風など様々である。いずれも、原型カメラのレンズ風デザイン部分の中央に小さなレンズ窓がしつらえてあり、実際はこれまでのフィルムやイメージセンサー位置にスマホやドライブレコーダー向けのレンズとセンサー一体型カメラモジュールが仕込んである造りと見える。これらを何台か弄ってみると構成・構造はほとんど同じで、各製造メーカー毎に外装のみ様々に造り込んでいる様である。外装のボタン配置や内蔵ファームウェアはほとんど共通の物が組み込まれている様で、ギミックとしてのレンズ風デザインのフィルター部分に、マクロアダプター付きワイドコンバージョンレンズをねじ込み、レンズ交換を楽しめるオプションも出回っている様である。また、共通プラットホームにディジタルビデオカメラの外装を被せ、ファームウエアをビデオカメラ操作寄りに仕込んであると思われるものも多く見受けられる。この共通プラットホーム的な考え方は、パソコンが国内ガラパゴス機時代にIBM DOS-V互換機が席捲、世界のほとんどが Windows 概念へ転換した流れを彷彿とさせられる。また、カメラモジュール製造側からは様々な画像処理ソフトウェアパッケージもリリースされており、今後カメラとして様々な新しい概念の機能が組み込まれる可能性を秘めている。

CMOSカメラモジュール例[1]
CMOSカメラモジュール例[1]

 当初はこの共通プラットホームに手振れ軽減機構はついていなかった様であるが、カメラモジュールが進化して一体小型レンズをアクチュエーターで制御する手振れ軽減機構が組み込まれると共に、固定焦点からソフトウェア処理のオートフォーカスも組み込まれる様になって来たと考えられる。

レンズ直接制御カメラモジュール例[2]
レンズ直接制御カメラモジュール例[2]

 ズームは今の所ディジタルズームで、センサー領域内を絞る事によりズーム感を出しているが、粒子は粗くなる。最近はカメラモジュールの基板上でレンズそのものの光学焦点距離を制御してズーミングするものも造られている様で、これは正にこれまでの銀塩カメラ時代からの望遠レンズを手動やモーター駆動でピント合わせしていたものと違わない。

レンズ直接制御望遠カメラモジュール例[2]
レンズ直接制御望遠カメラモジュール例[2]

 手振れ補正についても、レンズの光軸補正の他にイメージセンの位置制御による補正と云う段階に進みつつあると見受けられる。
センサー直接制御カメラモジュール例[3]
センサー直接制御カメラモジュール例[2]


レンズ交換型カメラモジュール例[4]
レンズ交換型カメラモジュール例[4]

 カメラモジュールは、カメラの全ての機能が小さな基板上で具現化される事になり、フィルムサイズ起因の銀塩カメラとしての外装の成り立ちや、その影響が色濃く反映しているこれまでのディジタルカメラの概念を一変する多様な形態やデザインのカメラが生まれてくると考えられ、正にスマホカメラ時代はそうした側面を持っていると感じられる。これまで銀塩カメラ時代から画角を変えるために焦点距離の異なるレンズを交換してきた。レンズ交換型カメラモジュールが普及して来ると、レンズ交換もサイズ制限が無くなりカメラ概念の自由度が増すと考えられる。ここで肝心となるレンズであるが、設計手法や製造過程の進展により、ガラスでなくても、小さなサイズでも、銀塩カメラのレンズと遜色ないものを生み出し得ると思われる。あとはこれまでの各レンズが醸し出してきた映えを新世代極小レンズでも味わえるかである。

 さて、DC202L-AFである。カメラモジュール採用共通プラットホーム方式の類いでは異色のレトロ路線であるが、オートフォーカスが効いていてコネクタが USB-C と世代的には最近の造り、金型も精密な様でプラスチック素材ながらしっかりとした出来映えとなっている。なにしろギミックではあるがファインダー付きが良い。思わず銀塩時代の郷愁に浸りながら覗いての撮影である。ファインダーを覗くと、ファインダー横の照度センサーが目を近づけている事を感知、自動的にモニターが消える仕組みまで組み込んである。オートフォーカスはピントが合うと「ピピッ」と音が鳴り、前掲「CANON EOS-630」で記述した「その昔TVコマーシャルで馴染んだ"ピピッ"という電子音と共に"パシャ"とシャッターを切る感じが、なんともシャッター心をくすぐる。」の再現、何とも言えない心持ちとなる。難点が無い訳ではないが、ここは雰囲気を楽しみたい。
 更に、カメラモジュール採用共通プラットホーム方式なので、画角はディジタルズームを除けば固定、レンズ交換を楽しみたいと、フィルターネジへ装着するワイドとテレのビデオカメラ用コンバージョンレンズを揃えてみた。出回っている共通プラットホーム方式用オプションとおぼしきワイドコンバージョンレンズはデザイン的にスッキリスマートであるが、さすがにビデオカメラ用のものはレンズ玉も大きく、かなりの存在感。小さなレンズ窓がすっかり隠れて、より本格的なカメラの風情となっている。

ワイドコンバージョンレンズ装着
ワイドコンバージョンレンズ装着

 ホットシューがあるので試しに手持ちとの相性を見てみようと、銀塩時代のストロボを装着してみたのが運の尽き。1回点灯したがそれきりとなった。調べるとストロボのトリガ電圧には高圧の物と低圧の物が有り、銀塩時代の物は200V近く出ているものが多いというではないですか。ディジタルカメラのX接点はトランジスタ等半導体制御されており、許容電圧もせいぜい数十V程度との情報が。ディジカメを故障させてしまった先達の方々も多いらしい。素子を飛ばしてしまったと猛省。それではとこれまで弄った共通プラットホーム方式ディジカメを調べてみると、X接点のスイッチングには 1AM(MMBT3904)と云うチップが使われている様なので早速発注。交換は後日。ストロボの様々を知り得た事と、低電圧トリガ電圧機種を数台入手出来た事が救いと納得した次第。
 

 レトロディジカメを調べている内に、『「digiFilm Camera Y35」は昭和ギミックが楽しめるカメラです。』とのヤシカ製が目にとまった。ディジカメと云うのにフィルム巻き上げレバーまで付いており、フィルムライクな「digiFilm」カートリッジを装填しての撮影スタンバイとなるとの事。この「digiFilm」は、それぞれ感度や色味等の撮影パラメータ毎に個別に用意されており、あたかも銀塩カメラへフィルムを装着して撮影を始める如くのシチュエーションを再現して臨むらしい。ここまでやるかの心意気に感服。


[1]CMOSカメラモジュール
  https://news.mynavi.jp/techplus/article/20200819-1234750/
[2]スマホ望遠カメラで、手ブレせずに満月をキレイに撮影できる理由とは?
  https://www.tdk.com/ja/featured_stories/entry_020.html
[3]サムスンはスマートフォンのカメラにセンサーシフトを導入するかもしれない
  https://mspoweruser.com/ja/what-is-sensor-shift-for-samsung/
[4]レンズ交換ができるオートフォーカスです
  https://www.gazo.co.jp/pu377

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