XL-F3


XL-F3
VICTOR XL-F3

 スーパーA方式アンプたる別掲 VICTOR AX-F1 を調べている内に、上位機 F3 シリーズのCDプレーヤが K2 方式を採用している事を知るに至った。しかも 20bit K2 である。K2 方式は既に別掲 XL-Z505 で試聴していたが、 20bit K2という響きとコンパクトコンポにもかかわらずA級方式のアンプやフェイズプラグ付きスピーカーを採用したF1シリーズの上位機F3と云う事で俄然興味が湧いた次第。運良く3コイン弱で「動作確認:電源、トレイ開閉しますが、再生をしません。」という代物がやって来た。

 雪かきに明け暮れた一ヶ月後やっと時間が取れて状態を確認すると、CDを入れても no disk と表示されて認識されない。さっそく筐体を開けて見ると、トレー開閉ゴムベルトは前掲 XL-Z505 同様かなり太い物が使用されている。VICTORの方針に納得である。内部の様子は、簡素化されているとは云えこれまでの他社のコンポやハイコンポ用CDプレーヤと比して、素子やICチップ数が多い印象である。光ピックアップを弄って見るもレーザー光そのものが点灯していないらしくCDは認識されない。光ピックアップはこれまで比較視聴したどの機種とも異なる、独自の物である。困り果ててネット情報を調べると、居ました、しっかりと XL-F3 のピックアップ型番まで記載しているお方が。OPTIMA-6S との事。更に調べると、以前光ピックアップを調達した事のある、CD用ピックアップを頒布して下さっている方のページに同型が有るではないですか。早速手に入れ組み替える事に。光ピックアップ価格の方が本体の二倍かかってしまった。ついでにピックアップサブフレームのゴムダンパーにいつものゴム部材再生シリコン系スプレーの液剤を塗り、トレー開閉ベルト表面の古いゴム組成をアルコールでゴシゴシ拭き取ると共に各所注油整備を実施。

XL-F3 pickup repair
VICTOR XL-F3 光ピックアップ交換

 試聴は、いつもの様に Everything Must Change のJAZZボーカルCDと常用リファレンスバイオリン曲CDとした。さて、20bit K2 ハイビット化である。今までの経験では、DACのビット数の増加に比して音に繊細さが増し、分解能が上がる傾向である。前掲 XL-Z505 に比して微細な響きをも聴き取れるのではないかと想像しながらの試聴である。前掲 XL-Z505 単体試聴時にはどの機種よりも音に濁りが無く透きとおった楽曲本来の響きがあると思われたが、今回の XL-F3 との比較試聴で XL-Z505 は薄いベールが掛かっている様なしっとりとした響きであると認識した。一方 XL-F3 の方はと云うと、XL-Z505 の延長線上にありながらハイビット化によると思われる微細な響きと高域の伸びが感じられる。弦の一本一本の音が絡み合って束ねられて、曲想を奏でている。しかしながら、少々高域にドライな印象も伴う。JAZZボーカルの方はと云うと、前掲 XL-Z505 に比して声の艶めかしさやしっとり感が低減し、ビールの如くあくまでドライな切れの良い表現と感じる。全体が聴く者に迫る音場でワイドレンジ、シンバルはシンバルらしい抜けの良い金属音を奏でている。総じて、物量投入旗艦機とも思える前掲K2機 XL-Z505 に比して、変わらぬ静寂性と高分解能、ワイドレンジ化と云うところか。

 常套句、これは困ったである。XL-Z505 との入れ替えをしばらく思案せざるを得ない。

 VICTOR の K2 は前掲 XL-Z505 で記述したとおり、1ビットD/A変換後にVANS方式4次ノイズシェーピングで量子化誤差によるノイズ成分を高調波領域に追いやり、後段のフィルタリングでこのノイズ成分を含む高調波領域を減衰させていると考えられるが、20bitのハイビット化ではこの考え方が成り立たない。整備試聴を終えた翌週、「20bit K2 プロセシング」の解説を見かけた。曰く、「量子化ビット数の不足により悪化していた微小レベル信号の再現性を改善する」とある。これは、微小レベル時に高ビット化する手法で微小レベル時の信号を滑らかにする AL24 や D.R.I.V.E. と同様な手法で、やはり1ビットD/A変換器ではなくなっていると思わざるを得ない。

 VICTOR はどうもCD板のマスタリングを始めとする、ディジタル的な手法によるCDの音質改善システムを総称して K2 としているらしい。CDプレーヤ側で云えば初期の1ビット方式K2やマルチビット化D/A変換方式K2(20bit K2 プロセシング)いずれもがK2の範疇の様である。そもそも K2 呼称は、信号に対して前処理的な働きをする K2 インターフェース[19]と後段のD/A変換部との総称の様である[32]。前処理部 K2 インターフェースは、光ピックアップ出力となる揺らぎ成分の多いCD板からのオーディオディジタル信号を自前のクロックで再サンプリングして波形整形を行い、揺らぎのない綺麗なディジタル信号として後段のD/A変換部へ送り込んでいる。従って、K2呼称の下に後段のD/A変換器には様々な様式が存在しうる。90年代初頭にはノイズシェーピング型のいわゆる MASH 的な1ビットD/A変換器が多かったが、DVD規格等に対応すべく最近はマルチビット型のD/A変換器が多くなっているのであろう。1ビットD/A変換以降はK2呼称に「プロセッシング」を附与しており、ディジタル演算の領域に踏み込んだきらいがある。


[1]tsdoctor HOME PAGE、https://tsdoctor.web.fc2.com/dp1001.htm
[2]Philips DAC、http://www.lampizator.eu/lampizator/LINKS%20AND%20DOWNLOADS/DATAMINING/tda1547.pdf
[3]お気楽オーディオキット資料館、http://www.easyaudiokit.com/
[4]DAC63S-mini/お気楽DAC2の製作、http://yasu-audio.com/dac63s_01.html
[5]DAC(DAC63S-mini)、http://www.geocities.jp/mkttid/dac63s.html
[6]フルーエンシ情報理論、http://www.jst.go.jp/kisoken/seika/zensen/04toraichi/
[7]EMISUKEの電子工作部屋、http://www.geocities.jp/aaa84250/HAIFU_16.htm
[8]Chu Moyタイプヘッドホンアンプの製作、http://www.minor-audio.com/bibou/amp/headphone_amp2004.html
[9]Web2.0が面白いほどわかる本、小川宏・後藤康成著、中経出版、中経の文庫495
[10]Pioneer レガートリンク解説、https://jpn.pioneer/ja/carrozzeria/archives/products/highend/lineup/rs-a1x2/function_2.html
[11]レガートリンク付きCDプレーヤについての検討(その2)、https://blogs.yahoo.co.jp/kiyo19371122/29056796.html
[12]折り返し雑音とフィルタ、http://www.gem.hi-ho.ne.jp/katsu-san/audio/next_gen/alias/aliasing.html
[13]サンプリング周波数と音質、http://aok.la.coocan.jp/sample_hz.htm
[14]お手軽シリーズ1.5の巻き、http://www20.tok2.com/home/easyaudiokit/okiraku/okiraku15.html
[15]「在庫限り」の誘惑に負けるの巻き(FN1242A)、http://www20.tok2.com/home/easyaudiokit/FN1242A/FN1242A.html
[16]心理学的,及び生理学的実験による超音波音響信号の知覚に関する考察、杉本武士、筑波大学大学院博士課程システム情報工学研究科修士論文、2003
[17]AL24 Processing、https://www.denon.jp/jp/blog/3817/index.html
[18]ONKYO 技術情報VLSC、https://www.jp.onkyo.com/audiovisual/technology/
[19]ビクター K2 テクノロジー技術情報、https://www.jvcmusic.co.jp/k2technology/aboutk2/technology.html
[20]二次元アレイスピーカを使った音場の形成とそのシュミレーション、http://tamlab.yz.yamagata-u.ac.jp/STUDY/スピーカ/speaker.html
[21]「Supreme D.R.I.V.E.(仮称)」開発!、http://www.kenwood.co.jp/newsrelease/2000/press20000619.html
[22]「D.R.I.V.E. with 32fs & 22bit resolution」、http://d.hatena.ne.jp/tma1/20070105
[23]アナログーデジタル変換、橋本研也、http://www.te.chiba-u.jp/~ken/lecture/Trans-3.pdf
[24]高速化に適した周波数変調方式刄ーADC、前澤宏一、松原渉、酒向万里生、水谷孝、http://www3.u-toyama.ac.jp/maezawa/Research/IPArev2.pdf
[25]AD/DA変換器とディジタルフィルタ、山崎芳男、日本音響学会誌 46巻 3号:1990、https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasj/46/3/46_KJ00001455904/_pdf/-char/ja
[26]デジタルとアナログの協調と共存、小林春夫、https://kobaweb.ei.st.gunma-u.ac.jp/news/pdf/koba20071016-2.pdf [27]AD/DA変換器、岩田穆、集積回路基礎 第10章、http://www.dsl.hiroshima-u.ac.jp/~iwa/text/LB10.ADC.pdf
[28]SL-P70仕様、https://audio-heritage.jp/TECHNICS/player/sl-p70.html
[29]アナログ・デジタル変換の基礎、村口正弘、マイクロ波工学2009.07.10
[30]1ビットD/A変換アレイを用いたD/A変換方式、谷泰範、信学技報、CAS94-9,VLD94-9,DSP94-31、pp.63-70
[31]ONKYO Integra C-1E解説、https://audio-heritage.jp/ONKYO/player/integrac-1ever2.html
[32]Victor XL-Z900、https://audio-heritage.jp/VICTOR/player/xl-z900.html
[33]SONY DAS-R1a、http://audio-heritage.jp/SONY-ESPRIT/etc/das-r1a.html
[34]Leica a la carte:SONY CDP-EX700、http://m3leica.blog66.fc2.com/blog-entry-556.html

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