T-300SR&TC-RX300


T-300SR
Pioneer T300SR

TC-RX300
SONY TC-RX300

 CD黎明期にFMエアチェックしたというJAZZ番組をYouTubeで見かけ、mp3録音して楽しんでいた。そういえば巻頭言で記述した様に、1970年代後半から80年代にかけてカセットデンスケ生録やカセットデッキFMエアチェックしたカセットテープがどこかにしまってあるはずと屋根裏まで探し、合唱団時代の生録や当時の録音済みテープが沢山見つかるに至り、にわかにカセットテープを再生したいと思い始めた。ほとんどが使っていたデッキの関係でDolby-Bか互換ANRSノイズリダクションがかけられている。
 まずは屋内作業中にBGMとして聴ける様にとラジカセを検討、最終的にDolby付きバブルCDラジカセ Panasonic RX-DS50 が1.5コインでやって来た。

RX-DS50
Panasonic RX-DS50

 この時代のPanasonicラジカセはリール駆動ギヤ欠けが持病との事で、入手品も同様理由の不動品だった。嬉しい事に先達の方々が3Dプリンタや型どりして互換ギアを製作しており早速入手、交換すると今度はバリバリ音が発生。サービスマニュアル片手にヘッドアンプ周辺トランジスターやオペアンプ、電子スイッチ、コンデンサ周りを交換したり丹念に調べるも故障箇所発見には至らなかった。さんざん弄り回して分解再組み立て回数は優に20回超えとなり、結局断念。ボロボロのスピーカーエッジを貼り替えた後、今度は2コインの同機種を入手してメイン基板などの部品を使い回し、なんとか修復、清掃。ついでにテープスピード調整時に、筐体を開ける事なく外部からドライバーをモーターの速度調整ボリュームへアクセス出来る様、筐体裏面電池室の最適位置へ穴あけ加工して完了。

スピーカーエッジ貼り替え
スピーカーエッジ貼り替え


ヘッドアジマス調整
ヘッドアジマス調整中

 カセットデッキ弄りを始めてから習得したテープスピードやヘッドアジマス等の調整を行い、屋根裏から探し出した45年物のカセットテープを、予めジャンクCDラジカセで早回ししてカビやゴミ落としをした後、いよいよかけて見た。
 まずは合唱団定期公演。VICTOR KD-2 カセットデンスケでの生録音。当時は定期演奏会が終わるとせっせとコピーして団員へ配ったものである。経費の事もあり、最安のスタンダードテープだった。2000年代に入ってからの機器で聴く事になろうとは、若かりし頃の私は全く想像すらしていなかった。クリアで鮮明、抜けの良い自然な音場がそこにはあった。45年程前の当時の記憶が鮮やかに蘇る。テープの実力を垣間見た気がしている。
 そしてエアチェックテープ、これは当時使用していたFMレシーバの受信帯域幅のせいもありやや低域と高域が落ち加減だが、こちらもなかなか、聴き流しには心地よい。
 ここ数年不調ラジカセを弄る事が多く、それらと比べてバブルCDラジカセ Panasonic RX-DS50 はなかなか良い音を聴かせてくれると感心。カセットテープの感覚をすっかり思い出し、カセットテープは最近どうなっているかと調べてみると、中古品が数多く出回っており楽しめそう。結構な数の謡曲カセットが混じった「カセットテープまとめて」とのコピーが目にとまった。手に入れてみると、まだ稽古していない謡曲の曲目が含まれており、さらに録音済みメタルテープが数本、録音済みハイポジションテープも数本、加えて時代物のポップスの録音、演歌少々と云うお宝内容だった。当方は未だメタルテープを録再できるカセットデッキを扱った事がないと、一気にメタルテープ録再カセットテープデッキ熱が盛り上がった。

 調べてみると、カセットテープのグレード毎にバイアスとイコライザを微調して適正化を図る、キャリブレーション機能が付いたデッキが有ったと知り、特にオートキャリブレーション機能が気になり手に入れる事となった。

T-300SR
Pioneer T-300SR

 Pioneer T-300SR である。4コインでやって来たが、整備後左チャンネルの出力がほとんど出なかった。例によって初段付近のコンデンサ、トランジスタ、オペアンプ、ロジックスイッチとサービスマニュアル片手に手当たり次第調べたが原因わからず。

不調箇所探索
T-300SR 不調箇所探索

 いよいよ手詰まりとなり2号機を2コインで手に入れた後、寝ている間のインスピレーションで気を取り直し、1号機を再調査。右チャンネルが大丈夫だったので調べていなかったボリューム、ありました、カーボン大量付着。

カーボン大量付着ボリューム
T-300SR カーボン大量付着ボリューム

 清掃処置と接点復活剤洗浄後組み付けると左チャンネルが復活。それではと、2号機の整備に取りかかるとやはり方チャンネルが不安定。さくさくとボリュームを調べると1号機と同様な状態。この機種のボリュームは持病かも知れない。

 T-300SR のオートキャリブレーション機能、なかなかに面白い。2ヘッド機の録音モニター出来ない形式なので、キャリブレーションはステップ毎に録音と再生を繰り返すが、バイアス、レベル、イコライザの各キャリブレーション段階をディスプレイする仕掛けが組み込んである。なかなかに面白く、大いにお気に入りである。種々カセットテープの録再を、キャリブレーション有る無しで試してみたが効果てきめん。高級機のマニュアルキャリブレーションより手軽と感じる。

オートキャリブレーション
T-300SR オートキャリブレーション ステータス表示

 大いに気に入ったキャリブレーションステータス表示付きの Pioneer T-300SR だが、他社機種はどうだろうかと調べると、中古値頃感の SONY TC-RX300が見つかり、3コインでやって来た。

TC-RX300
SONY TC-RX300

 こちらはベルトが加水分解でベトベト、グリース状態に溶けたベルトがカセットリール駆動ユニットのアチコチに付着しまくっていた。これはほとんど分解しないと洗浄できない。洗浄後新しいベルトを手に入れて装着し、組み立てて状態を確認すると、始めは順調に動作していると思われたがなにやらオートリバースヘッド回転が不調。モード切替駆動ギアが割れていた。このカセット駆動ユニットを内蔵している機種の持病らしい。

加水分解ベルト洗浄
TC-RX300 加水分解ベルト洗浄

 ギアを入手、組み付けて動作試験をするもやはりモードチェンジが出来ない。よくよく調べると、回転ヘッドが完全に固着していて動かない。これはダメかと思われたが諦めきれずにまずは隙間にCRC-556を注入、その後回転ヘッドを指で強引に回すと僅かずつ回転し始め、100回、200回と繰り返し軽く回る状態に。再生試験をすると今度は出力のチャンネル間バランスがおかしい。先の Pioneer T-300SR 事例に倣いボリュームを分解洗浄したい所だが、こまかすぎる箇所なので接点復活剤注入と余剰液の充分な拭き取り後の100回を超す回転で済ませると、異常は無くなった。どうもこの程度の年数を経た機器はボリュームも鬼門らしい。

テープスピード調整
TC-RX300 テープスピード調整

 テープスピードとヘッドアジマスを調整後に種々カセットテープをオートキャリブレーション有る無しで録再試験、やはりキャリブレーションの効果はあるものだと実感した次第。


[1]カセットテープデッキのテープ速度調整をやってみる、https://tsu-morrow.seesaa.net/article/201709article_6.html
[2]カセットテープの速度調整、https://fixerhpa.blog.fc2.com/?no=205
[3]カセットデッキのアジマス調整の方法、https://a-nkmr.com/archives/4560
[4]オシロスコープにリサジュー図形を描いて正弦波交流のパラメータを測定する方法、http://www.gxk.jp/elec/musen/1ama/H32/html/H3212A25_.html
[5]SONY TC-WE505 ギヤ割れ〜修理中止、http://audiolife.coolblog.jp/2019/07/17/sony tc-we505 ギヤ割れ〜修理中止/
[6]Sony TCM-190 transport gear repair / replacement、https://www.tapeheads.net/threads/sony-tcm-190-transport-gear-repair-replacement.80174/
[7][SONY] メカデッキ(TCM-110/TCM-CMAY/TCM-170/TCM-200/TCM-190)について[カセットデッキ]、https://a-nkmr.com/archives/1835
[8][SONY] ゴムベルトの交換(型式と長)[カセットデッキ]、https://a-nkmr.com/archives/300
[9]Restoring my Sony double cassette deck、https://www.reddit.com/r/cassetteculture/comments/cfon75/restoring_my_sony_double_cassette_deck/
[10]SONY TC-RX300 修理1(ベルト交換)、https://hobby01.exblog.jp/28271656/

Return