SL-P70


SL-P70
Technics SL-P70

 Technics社クラスAAアンプSU-A70について詳細を調べている時、同シリーズにMASH方式なるD/A変換器を採用したSL-P70と言うCDプレーヤがある事を知るに至った。SL-P70の特徴は以下の通り。[28]
高音質回路[S-アドバンストMASH]1ビットDACを採用Gシリーズの最上位モデルSL-P2000に搭載のS-アドバンストMASH・1ビットDACを採用。

4次ノイズシェービング回路、64倍オーバーサンプリングにより、理論ダイナミックレンジ145dBを達成また、LSIのチップ構成では、S-アドバンストMASHとPWM出力ICの2チップ構成とし、デジタルノイズの影響を避けています。

PWM出力部にはclassAプッシュプル構成の電流出力アンプとし、PWM波形上でのオーバーシュートやアンダーシュートの発生を抑制パルスの波高値を安定化させ、理想的なPWM出力を実現しています。
 この説明では1ビットDACと4次ノイズシェービング回路によるD/A変換とあり、VICTORのK2が採用しているD/A変換(別掲XL-Z505)と基本的には同じではないかと気付いた次第。

 さて、MASHである。ひと昔程前になろうか、大手通信会社の厚木にある研究所で、MASHの開発に携われた方に超高速A/D変換チップ開発関連でご指導を仰いだ事があると思い出した次第。当時の私はCDプレーヤのD/A変換器には興味なく、ましてやMASHのネーミングは耳にはしていたが何を意味しているかも解らずに居た。MASHの神様を前にして、無知な私であった。

 そういえば、我が街のリサイクル屋さんで見つけて1コインで手に入れていたポータブルCDプレーヤもMASHのロゴがプリントされた物だった。ラインアウトがあり、取り回しがいいので咄嗟の音源としてよく引っ張り出して使っていたが、えらく音が良いと感じていた。この春先に娘が持っているポータブルCDプレーヤが故障したと云う事で急遽出番となっている。

 SL-P70を探す事しばし。あまり出回らなかったのか、はたまた1994年製で古すぎるのか、なかなか見つからずにいた。日食騒ぎ翌年4月半ばの霙が降ってくる荒れ模様の春に、「電源は入ります」という説明で「NO DISC」と点灯している様子の薄汚れたジャンク品が4コインで我が家にやってきた。

 まずは様子見と言う事で電源投入後100円CDを入れると、マウント後にCDが回転すらせずに「NO DISC」表示で立ち往生。中を見ると、CDピックアップ部分はどちらかと言えばポータブルCD等に用いられている全体が密閉された物で、平たいユニットが顔を出した。色々調べるとRAE0113Zという形式の、なかなか出回っていない物と判明。米国やヨーロッパのパーツ屋さんに若干在庫が有る程度のものの様である。これは手強い。

RAE0113Z
RAE0113Z型 光ピックアップユニット

 ケース内はトランス部などの加熱によると思われる揮発ガスの煤状の物が部分的に付着しており、更にトレーが外気に触れる辺りには煙草と思われる脂状の膜がうっすらとかかっている様子。レーザー発光はしている感触があり、ケース内外の様子から類推してピックアップレンズの曇りを疑い、まずは定番のピックアップレンズのアルコールクリーニングを実施。綿棒は余り汚れない。ワクワクしながらCDを再度マウントするも同様エラー。これはピックアップが逝かれているかもと思いつつ二度目のアルコール洗浄。今度はピックアップが壊れてもダメ元でゴシゴシと力を入れて。その後CDをマウントすると、今度はCDが回転し始め一歩前進するもTOCが認識されず「NO DISC」表示。ピックアップ洗浄で行けそうな感触となってきたので、3回、4回と私にしては初めてと言うくらいの心もちで力を入れてゴシゴシ。ついに、TOCを正常に認識出来るまでこぎ着けた。おっかなびっくりのヤレヤレである。

 その後プレーヤ内外のゴシゴシ洗浄とトレー駆動ベルトの交換を施し、その日はプレーヤ全体を目覚めさせる目的でアンプ未接続のままCDを数枚回すだけとした。

 さて、いつもの様に Everything Must Change のJAZZボーカルCDと常用リファレンスバイオリン曲CDを用意しようとしてバイオリン曲のケースを開けたらCD板が無い。困った。思い当たる節としては、最近ミニコンポが壊れたとの知らせで娘用にジャンクミニコンポを整備する事二台。あとは我が街のリサイクルショップの片隅に寂しく佇んでいて気にかかり、思わず手に入れたジャンクハイコンポの整備。いずれかのCDプレーヤに入ったまま梱包してしまったと思われ、我ながら愕然。仕方なく、同じ奏者によるデュランティとのファーストセッションアルバムを持ち出す事に。

 いよいよ試聴である。これはいい。常用レガートリンクCDプレーヤと聴き別けられない程に好みの音が迫ってくる。1ビットDACと4次ノイズシェービング回路によるD/A変換との仕様からすると、VICTORのK2と同傾向かと想像していたが全く違った。最近1ビット機は音域全体に渡ってコシがあると感じているが、このSL-P70はそれに違わず、高分解能で音の粒まで表現している。私的にはレガートリンクの方が高域に情感が加味され、より好みではあるが、SL-P70は弦の音やボーカルが清楚に聞こえる。

 前述のポータブルCDプレーヤと云い、今回試聴のSL-P70と云い、MASHの音は心に残る。

 本体入手前に見つけていた保守用マニュアルによると、単独である程度の故障診断が出来るサービスモードが造り込まれている様である。更に、専用CDを用意するとどのICが故障しているか迄判定する、かなり凝った診断が出来る様である。光ピックアップはポータブルCD等に用いられている形態と前述したが、調整箇所がほとんど無いディジタルサーボの採用でメンテナンスフリーを目指していると感じられる。販売後のメンテナンスまで視野に入れた、松下の総合力を見た思いである。


[1]tsdoctor HOME PAGE、https://tsdoctor.web.fc2.com/dp1001.htm
[2]Philips DAC、http://www.lampizator.eu/lampizator/LINKS%20AND%20DOWNLOADS/DATAMINING/tda1547.pdf
[3]お気楽オーディオキット資料館、http://www.easyaudiokit.com/
[4]DAC63S-mini/お気楽DAC2の製作、http://yasu-audio.com/dac63s_01.html
[5]DAC(DAC63S-mini)、http://www.geocities.jp/mkttid/dac63s.html
[6]フルーエンシ情報理論、http://www.jst.go.jp/kisoken/seika/zensen/04toraichi/
[7]EMISUKEの電子工作部屋、http://www.geocities.jp/aaa84250/HAIFU_16.htm
[8]Chu Moyタイプヘッドホンアンプの製作、http://www.minor-audio.com/bibou/amp/headphone_amp2004.html
[9]Web2.0が面白いほどわかる本、小川宏・後藤康成著、中経出版、中経の文庫495
[10]Pioneer レガートリンク解説、https://jpn.pioneer/ja/carrozzeria/archives/products/highend/lineup/rs-a1x2/function_2.html
[11]レガートリンク付きCDプレーヤについての検討(その2)、https://blogs.yahoo.co.jp/kiyo19371122/29056796.html
[12]折り返し雑音とフィルタ、http://www.gem.hi-ho.ne.jp/katsu-san/audio/next_gen/alias/aliasing.html
[13]サンプリング周波数と音質、http://aok.la.coocan.jp/sample_hz.htm
[14]お手軽シリーズ1.5の巻き、http://www20.tok2.com/home/easyaudiokit/okiraku/okiraku15.html
[15]「在庫限り」の誘惑に負けるの巻き(FN1242A)、http://www20.tok2.com/home/easyaudiokit/FN1242A/FN1242A.html
[16]心理学的,及び生理学的実験による超音波音響信号の知覚に関する考察、杉本武士、筑波大学大学院博士課程システム情報工学研究科修士論文、2003
[17]AL24 Processing、https://www.denon.jp/jp/blog/3817/index.html
[18]ONKYO 技術情報VLSC、https://www.jp.onkyo.com/audiovisual/technology/
[19]ビクター K2 テクノロジー技術情報、https://www.jvcmusic.co.jp/k2technology/aboutk2/technology.html
[20]二次元アレイスピーカを使った音場の形成とそのシュミレーション、http://tamlab.yz.yamagata-u.ac.jp/STUDY/スピーカ/speaker.html
[21]「Supreme D.R.I.V.E.(仮称)」開発!、http://www.kenwood.co.jp/newsrelease/2000/press20000619.html
[22]「D.R.I.V.E. with 32fs & 22bit resolution」、http://d.hatena.ne.jp/tma1/20070105
[23]アナログーデジタル変換、橋本研也、http://www.te.chiba-u.jp/~ken/lecture/Trans-3.pdf
[24]高速化に適した周波数変調方式刄ーADC、前澤宏一、松原渉、酒向万里生、水谷孝、http://www3.u-toyama.ac.jp/maezawa/Research/IPArev2.pdf
[25]AD/DA変換器とディジタルフィルタ、山崎芳男、日本音響学会誌 46巻 3号:1990、https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasj/46/3/46_KJ00001455904/_pdf/-char/ja
[26]デジタルとアナログの協調と共存、小林春夫、https://kobaweb.ei.st.gunma-u.ac.jp/news/pdf/koba20071016-2.pdf [27]AD/DA変換器、岩田穆、集積回路基礎 第10章、http://www.dsl.hiroshima-u.ac.jp/~iwa/text/LB10.ADC.pdf
[28]SL-P70仕様、https://audio-heritage.jp/TECHNICS/player/sl-p70.html
[29]アナログ・デジタル変換の基礎、村口正弘、マイクロ波工学2009.07.10
[30]1ビットD/A変換アレイを用いたD/A変換方式、谷泰範、信学技報、CAS94-9,VLD94-9,DSP94-31、pp.63-70
[31]ONKYO Integra C-1E解説、https://audio-heritage.jp/ONKYO/player/integrac-1ever2.html
[32]Victor XL-Z900、https://audio-heritage.jp/VICTOR/player/xl-z900.html
[33]SONY DAS-R1a、http://audio-heritage.jp/SONY-ESPRIT/etc/das-r1a.html
[34]Leica a la carte:SONY CDP-EX700、http://m3leica.blog66.fc2.com/blog-entry-556.html

Return