新素材CD(SHM-CD)

 弟からの情報で新素材CD(SHM-CD [Super High Material CD])なるものを聴いた。CD板素材を液晶パネル用途のポリカーボネイト樹脂にした物らしい。CDプレーヤのピックアップ光の透過が良くなりビット落ちが改善され、従ってビットエラー補正などによる音の濁りが低減されるとのふれ込みである。今回試聴したものは、従来素材によるCD板とSHM-CD板の二枚の板に全く同じ音源を入れた比較試聴サンプラー盤である。使用した機器は、DP-1001(改造)CDプレーヤ、TA2020-020ディジタルアンプ、LM-011スピーカである。

 眉唾物という感覚での試聴であったし、最初は全く違いを聴き分けられなかった。それでも、製造者側の言い分にも何某かの根拠があるだろうと、曲を選んで最初の数十秒分を取っ替え引っ替え聴き比べてみた。

 例えばモーツァルト レクイエム ニ短調 K.626 ラクリモーザの出だしで交響楽と合唱が徐々にクレッシェンドしてくるが、SHM-CDでは交響楽と合唱が明確に分離、醸し出す音色自体が柔らかい印象。対する従来素材CDでは、交響楽と合唱が今ひとつ混ざり合い、音色がやや荒々しい。その後JAZZ盤サンプラーでも取っ替え引っ替え比較試聴を重ねてみたが総じて分離に差違と音色に柔らかさと荒々しさの相違が感じられた。

 今もってCDに比してレコードの方が音が良いとの評を耳にし、それはCDの仕様である高域遮断とディジタルサンプリング起因と思い込んでいたが、ヒョッとしてこれは今回体験したビット読み込みエラーを聴き別けての評ではないのかと思い至った。今回の比較試聴で従来素材CDに感じた音色の荒々しさは、ビット読み込みエラー時のエラー補正データ部分で音のつながりが悪くなり、曲奏の滑らかさの欠如として感知されているのではないのかと思われる。対するレコードは、録音機器の能力そのままにすべての音域情報が記録されており、再生時装置毎の再生能力によって違いが生じるとは思われるが余す所無く記録された情報を途切れることなく再生していると考えられる。

 この事実は、CDプレーヤを低ジッタ化する為に重厚長大路線で改造したり発振器をより一層高安定化すべく日々改良されている先達の人達の問題意識に通じるものと思われ、またしても目から鱗状態である。

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