PD-N901


PD-N901
PIONEER PD-N901(ミニコンポ FILL)

 超高域側をCD規格より余分に補償しようとする方式たるレガートリンクを比較試聴すべく PIONEER のレガートリンク採用機種を物色、値頃感のある PD-N901 を入手した。この PD-N901 は高性能システムコンポーネントと称して売られてい同社 FILL シリーズのCDチューナーで、当初 PD-N901 単体を探していたのだが縁があり FILL 全セットが我が家にやってきた。

 レガートリンクであるが、別掲でアナログ復調時に高域遮断するフィルタのさじ加減で超高域側をCD規格より余分に補償する様に見受けられると表現したが、特性は次の様なものである。

LEGATO LINK Specification
レガートリンク特性[11]

 上図に拠れば確かに超高域側が補償されているが、この補償部分は一種の折り返し雑音とも考えられ、実在する音域ではなく超高域側に雰囲気が加味される程度はないかと思えてならない。で、入手した PD-N901 であるが、動作試験を行い問題なさそうなので筐体やCDピックアップの清掃は後回しにして早速試聴。

Under Competition
DAC比較試聴中

 大好きな「Everything Must Change」をアルバムタイトルとした「ビリーが甦ったようだ」と帯に記述されているボーカルや、いつものリファレンスバイオリンCDを取っ替え引っ替え聴き比べると、音質は自作 DAC63S-mini と限りなく近いと感じられる。PD-N901 レガートリンクDACの方が低域が若干薄く、超高域に心地良い反響音の様な音を伴い情感をそそるが折り返し雑音付加の影響と思われる位相の揺らぎが感じられる。

 フルチューンの KENWOOD DP-1001 光出力を自作 DAC63S-mini で聴いた時と PD-N901 光出力を同じく DAC63S-mini で聴いた時に殆ど変わりがなかったのには驚いた。フルチューンの KENWOOD DP-1001 と届いて清掃もしていない入門機とおぼしき DP-N901 での両者 DAC63S-mini 出力の結果からすると、CDプレーヤのドライブ部分が音質へ与える影響は大きくないのかも知れないと感じられる。もっともこの PD-N901、CDクランプ構造が尋常ではない大がかりな構造で、CDドライブやピックアップ部分全体をCD側にせり上げて密着するシステムである。CDを回転構造にしっかり挟み込む事に注力した設計と見て取れる。パイオニアといえば、CDピックアップをひっくり返して使うターンテーブル方式のCDマウント構造を採用しているCDプレーヤもあり、CD再生にかける並々ならぬ情熱を感ぜずにはいられない。

CD Mount System
内部CDマウント構造

 パイオニア社の報道資料に拠れば、この PD-N901 の特徴は以下の様になっている。
CDプレーヤー部には、CDフォーマット上ではカットされている20kHz以上の音楽成分を復元するレガート・リンク・コンバージョンを搭載。さらに信号の検出から伝送処理までをより正確に行う「Z−コンセプト」に基づき、音楽信号の時間軸での揺らぎ(ジッター)を排除するアキュレートEFM回路やクリーンレーザーピックアップを搭載するなど徹底したジッター対策を施しています。

「Z-コンセプト」技術は、信号検出部の「ステイブル・ディテクション(安定信号検出)」、伝送部の「アキュレート・トランスミッション(時間軸正確伝送)」、変換部の「ジッター・フリー・コンバージョン(時間軸忠実変換)」技術の組み合わせにより波形ひずみを低減し、正確なデジタル信号伝送を追求するものです。

EFM回路はアナログのRF信号をA/D変換して得られます。通常の変換ではRF信号のジッターが少なくてもEFM信号に変換するとジッターの増加があります。「アキュレートEFM回路」によりジッターを約30%低減させることが可能となります。
 さてさて、レガートリンク PD-N901 である。好みからすると、もう少し低域に厚みがあれば DAC7 や20ビット PCM-63P シングル(DAC63S-mini)に勝り、もう云う所無しなのだが。

 その後一週間ばかりの間、FILLのMDデッキやアンプを清掃&オーバーホールしつつ PD-N901 を試聴したが、サックスの管の響きや共鳴する空気感、バイオリンの胴体の醸し出す音までが聴き取れそうな気がして病みつきになってしまった。低域の不足感は今後何とかするとして、日本の陸地に限ると46年ぶりとなる皆既日食が一ヶ月後に迫った梅雨入り間近の深夜、ついにこれまで愛用してきたフルチューン KENWOOD DP-1001 と入れ替えるに至った。


[1]tsdoctor HOME PAGE、https://tsdoctor.web.fc2.com/dp1001.htm
[2]Philips DAC、http://www.lampizator.eu/lampizator/LINKS%20AND%20DOWNLOADS/DATAMINING/tda1547.pdf
[3]お気楽オーディオキット資料館、http://www.easyaudiokit.com/
[4]DAC63S-mini/お気楽DAC2の製作、http://yasu-audio.com/dac63s_01.html
[5]DAC(DAC63S-mini)、http://www.geocities.jp/mkttid/dac63s.html
[6]フルーエンシ情報理論、http://www.jst.go.jp/kisoken/seika/zensen/04toraichi/
[7]EMISUKEの電子工作部屋、http://www.geocities.jp/aaa84250/HAIFU_16.htm
[8]Chu Moyタイプヘッドホンアンプの製作、http://www.minor-audio.com/bibou/amp/headphone_amp2004.html
[9]Web2.0が面白いほどわかる本、小川宏・後藤康成著、中経出版、中経の文庫495
[10]Pioneer レガートリンク解説、https://jpn.pioneer/ja/carrozzeria/archives/products/highend/lineup/rs-a1x2/function_2.html
[11]レガートリンク付きCDプレーヤについての検討(その2)、https://blogs.yahoo.co.jp/kiyo19371122/29056796.html
[12]折り返し雑音とフィルタ、http://www.gem.hi-ho.ne.jp/katsu-san/audio/next_gen/alias/aliasing.html
[13]サンプリング周波数と音質、http://aok.la.coocan.jp/sample_hz.htm
[14]お手軽シリーズ1.5の巻き、http://www20.tok2.com/home/easyaudiokit/okiraku/okiraku15.html
[15]「在庫限り」の誘惑に負けるの巻き(FN1242A)、http://www20.tok2.com/home/easyaudiokit/FN1242A/FN1242A.html
[16]心理学的,及び生理学的実験による超音波音響信号の知覚に関する考察、杉本武士、筑波大学大学院博士課程システム情報工学研究科修士論文、2003
[17]AL24 Processing、https://www.denon.jp/jp/blog/3817/index.html
[18]ONKYO 技術情報VLSC、https://www.jp.onkyo.com/audiovisual/technology/
[19]ビクター K2 テクノロジー技術情報、https://www.jvcmusic.co.jp/k2technology/aboutk2/technology.html
[20]二次元アレイスピーカを使った音場の形成とそのシュミレーション、http://tamlab.yz.yamagata-u.ac.jp/STUDY/スピーカ/speaker.html
[21]「Supreme D.R.I.V.E.(仮称)」開発!、http://www.kenwood.co.jp/newsrelease/2000/press20000619.html
[22]「D.R.I.V.E. with 32fs & 22bit resolution」、http://d.hatena.ne.jp/tma1/20070105
[23]アナログーデジタル変換、橋本研也、http://www.te.chiba-u.jp/~ken/lecture/Trans-3.pdf
[24]高速化に適した周波数変調方式刄ーADC、前澤宏一、松原渉、酒向万里生、水谷孝、http://www3.u-toyama.ac.jp/maezawa/Research/IPArev2.pdf
[25]AD/DA変換器とディジタルフィルタ、山崎芳男、日本音響学会誌 46巻 3号:1990、https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasj/46/3/46_KJ00001455904/_pdf/-char/ja
[26]デジタルとアナログの協調と共存、小林春夫、https://kobaweb.ei.st.gunma-u.ac.jp/news/pdf/koba20071016-2.pdf [27]AD/DA変換器、岩田穆、集積回路基礎 第10章、http://www.dsl.hiroshima-u.ac.jp/~iwa/text/LB10.ADC.pdf
[28]SL-P70仕様、https://audio-heritage.jp/TECHNICS/player/sl-p70.html
[29]アナログ・デジタル変換の基礎、村口正弘、マイクロ波工学2009.07.10
[30]1ビットD/A変換アレイを用いたD/A変換方式、谷泰範、信学技報、CAS94-9,VLD94-9,DSP94-31、pp.63-70
[31]ONKYO Integra C-1E解説、https://audio-heritage.jp/ONKYO/player/integrac-1ever2.html
[32]Victor XL-Z900、https://audio-heritage.jp/VICTOR/player/xl-z900.html
[33]SONY DAS-R1a、http://audio-heritage.jp/SONY-ESPRIT/etc/das-r1a.html
[34]Leica a la carte:SONY CDP-EX700、http://m3leica.blog66.fc2.com/blog-entry-556.html
[35]Sony CDP-710、https://www.hifiengine.com/manual_library/sony/cdp-710.shtml#comment-29462
[36]1ビットDACとR-2R DACの音質差 -- 名チップ PCM56、https://ameblo.jp/etsuo-okuda/entry-10479409645.html
[37]DACが16bitで何が悪い!、ステレオ時代、ネコ・パブリッシング、vol.21 pp.85-95
[38]CDの16ビットデータを20ビット化するビット拡張技術のしくみと効果[前編]、柴崎功、MJ無線と実験、誠文堂新光社、2008年8月号(第95巻 第8号 通巻1026号)、pp.84-94
[39]CDの16ビットデータを20ビット化するビット拡張技術のしくみと効果[中編]、柴崎功、MJ無線と実験、誠文堂新光社、2008年9月号(第95巻 第9号 通巻1027号)、pp.84-93
[40]CDの16ビットデータを20ビット化するビット拡張技術のしくみと効果[後編]、柴崎功、MJ無線と実験、誠文堂新光社、2008年10月号(第95巻 第10号 通巻1028号)、pp.84-92
[41]素子再生音に革命をもたらしたフルエンシーフィルター、柴崎功、MJ無線と実験、誠文堂新光社、2009年4月号(第96巻 第4号 通巻1034号)、pp.84-93
[42]ヤマハプロビット方式CDプレーヤーの詳細、柴崎功、MJ無線と実験、誠文堂新光社、1996年9月号(第83巻 第9号 通巻883号)、pp.94-101

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