KENWOOD DP-1001 (DAC7)

DP-1001改造着手
DP-1001内部

 CDのディジタル/アナログ変換(DAC)部分が再生音に大きな影を落としているらしい事を知り、DACの違いで聴感がどんなに変わりうるか体験したくなった。ネットでは90年代末期のKENWOODのDP-1001がDAC7搭載機として話題の様で、中古価格もこなれておりさっそく入手。「DAC7」は、フィリップス1bit方式ビットストリーム型SAA7350チップとTDA1547チップの組み合わせを称しているとある[2]。マルチビット方式はビット数に応じて段階的に処理するためにずれが生じるが、1bit方式では原理的にビットを小分けするノイズが発生せずクリアーで伸びやかな音質である反面低音が出ないとの評がある一方、DAC7では低音が厚く倍音表現に優れた深みのある音質がすばらしいとの記述も見受けられる[2]。

 入手後現用のDVD共用192kHz24bitDACプレーヤと比較したが、駄耳には違いを感じる事が出来なかった。その後さっそくネット情報から構想を練っていた改造に着手。

DP-1001出力基板改造

 出力ラインの電解コンデンサはオーディオ規格の立派な物が使われていたが、経年変化を心配し同等品と交換。出力端には、高域カット用コンデンサ(ローパスフィルタ)が入っているのでこれを除去。[1]

DP-1001クランパ制震

 CDトレイ部分は、高級機と違ってプラスチック(エンジニアリング系か)の構造物で、たたくと共振音が感じられた。CDクランパが中央に付いており、再生時CDと一緒に回転するので、支持構造が共振して振動しピックアップへのノイズ源になりかねない。車載オーディオ用鉛系ダンパーを使用するのが有効と思われたが、最終的にはコストパフォーマンスの観点からゴムシート貼りとした。

DP-1001ピックアップ反射光吸収

 ネット情報では、ピックアップへの不要輻射ノイズの大半は、CD照射レーザー光がCDで反射したのちピックアップ周辺で乱反射して検出されるもので、ピックアップ周辺へ光を吸収するシート状の物を貼る事により改善出来るとある。フェルトを試したが厚すぎ、結局、粘着包帯を成型し艶消し塗装をしたものを貼り付けた。効果の程は、処置前後で検証していないので不明。

 以上の改造後、改めて先の現用DVD共用192kHz24bitDAC機との比較試聴と相成った。今度は丁度カミさんも居たので二人での検証である。今までリファレンスCDはバイオリン曲の事が多く、今回も使用。改造DAC7機はDVD共用192kHz24bitDAC機と比して、力強く生き生きとした低域から繊細な高音まで澄んだ音色で聴かせてくれた。どんどん曲に引き込まれる様な感覚。ピアノ曲、オーケストラものもしかり。いいじゃん、これ、と二人で納得。その後、自作6V6GTアンプ+DIG IIへつなぎJAZZを流すと、今までの音とは明らかに違い一皮剥けた低域から高域まで澄んだ音色となった。愛用機の仲間入りである。

 約一ヶ月後、電源周り強化[1]用部品が揃い作業を再開。電源平滑用コンデンサ容量を約4.5倍(15,000μF)とした。オリジナルはオーディオ用の立派なものであったが、交換部品のそれは入手出来たのが通常品であった。高級機の電源周りの処理に習い、両コンデンサ間へ緩衝材を挟んだ後にタイラップで固定してみた。WEB上では音質に影響する部位のコンデンサにアルミシートや銅シートを貼り付けている例も見られるが、今回はそのままとしている。また、電気二重層コンデンサ(ゴールドキャパシタ)5.5V0.047μFが液漏れしていたので交換すべく探したが、横型は結構出回っていたが縦型がなかなか見つからない。やっとの事で製造業向け電子部品納入業者の部品リスト中に縦型を見つけ、入手交換。

DP-1001平滑コンデンサ強化

 今回の電源周り強化改造では、低域の力強さが増したと感じている。その後しばらくしてオペアンプ[8]を、古典名器との評もあり音が良いとされているFET入力の物(OPA2604AP、オリジナルはNJM4565DD)と交換した。

DP-1001オペアンプ交換

 オペアンプ二段構成をD/Aとメインそれぞれの基板に分割実装してあり、左がD/A基板で右がメイン基板の様子。音の変化については比較試聴[8]していないので何とも云えないが、少なくともJAZZを聴く限りでは演奏者の居る空間の雰囲気(ホールやスタジオ)を伴って音が出て来てビックリ。今までと違って演奏会場に居合わせている様な心地である。全体的には透明感が増し、豊かな低域と繊細な中高域というところか。低域側の特徴はDAC7固有の音出しによるものと、今回の電源周りを強化した効果によると考えられる。

 その後一年以上安定に動作していたがサブプライムで世界中が混乱している年の瀬、英国企画の格安50年代ブルース5枚組CDを聴いていた時にCD外周でブツブツとピックアップのトレース不足と思われる周期性ノイズが発生。ピックアップレーザー光周りの調整では改善しない。ネット検索でピックアップはKSS-240Aと判明、新品を入手して交換を試みるも工場出荷調整そのままではCDを検知しない事態となった。あれこれ調整するも結局CDを検知出来ず、やむなくこれまでのピックアップを再度組み込み、本腰を入れてレーザー光調整に再挑戦。調整ボリュームは3箇所、測定器無しであれこれ弄る事1時間以上、やっと3個のボリュームの機能が見えてきた。勘所をつかんで、SHM-CDサンプラーを試聴しながら追い込むと、最終的にはこれまで一年以上聴いてきた音とは明らかに異なる、ダンピングの効いた豊穣な低音と澄み切った高音域による聴き入ってしまう音に到達した。ブツブツ周期性ノイズは、新たな境地への神のお導きだったのかも知れない。

DP-1001ピックアップレーザー光調整

 ピックアップのレーザー周りの調整でこんなにも音が変わるのかと身をもって体験、SHM-CDと云い、CDをはじめとするディジタルの世界は一筋縄では行かないものとの意を強くした次第。


[1]tsdoctor HOME PAGE、https://tsdoctor.web.fc2.com/dp1001.htm
[2]Philips DAC、http://www.lampizator.eu/lampizator/LINKS%20AND%20DOWNLOADS/DATAMINING/tda1547.pdf
[3]お気楽オーディオキット資料館、http://www.easyaudiokit.com/
[4]DAC63S-mini/お気楽DAC2の製作、http://yasu-audio.com/dac63s_01.html
[5]DAC(DAC63S-mini)、http://www.geocities.jp/mkttid/dac63s.html
[6]フルーエンシ情報理論、http://www.jst.go.jp/kisoken/seika/zensen/04toraichi/
[7]EMISUKEの電子工作部屋、http://www.geocities.jp/aaa84250/HAIFU_16.htm
[8]Chu Moyタイプヘッドホンアンプの製作、http://www.minor-audio.com/bibou/amp/headphone_amp2004.html
[9]Web2.0が面白いほどわかる本、小川宏・後藤康成著、中経出版、中経の文庫495
[10]Pioneer レガートリンク解説、https://jpn.pioneer/ja/carrozzeria/archives/products/highend/lineup/rs-a1x2/function_2.html
[11]レガートリンク付きCDプレーヤについての検討(その2)、https://blogs.yahoo.co.jp/kiyo19371122/29056796.html
[12]折り返し雑音とフィルタ、http://www.gem.hi-ho.ne.jp/katsu-san/audio/next_gen/alias/aliasing.html
[13]サンプリング周波数と音質、http://aok.la.coocan.jp/sample_hz.htm
[14]お手軽シリーズ1.5の巻き、http://www20.tok2.com/home/easyaudiokit/okiraku/okiraku15.html
[15]「在庫限り」の誘惑に負けるの巻き(FN1242A)、http://www20.tok2.com/home/easyaudiokit/FN1242A/FN1242A.html
[16]心理学的,及び生理学的実験による超音波音響信号の知覚に関する考察、杉本武士、筑波大学大学院博士課程システム情報工学研究科修士論文、2003
[17]AL24 Processing、https://www.denon.jp/jp/blog/3817/index.html
[18]ONKYO 技術情報VLSC、https://www.jp.onkyo.com/audiovisual/technology/
[19]ビクター K2 テクノロジー技術情報、https://www.jvcmusic.co.jp/k2technology/aboutk2/technology.html
[20]二次元アレイスピーカを使った音場の形成とそのシュミレーション、http://tamlab.yz.yamagata-u.ac.jp/STUDY/スピーカ/speaker.html
[21]「Supreme D.R.I.V.E.(仮称)」開発!、http://www.kenwood.co.jp/newsrelease/2000/press20000619.html
[22]「D.R.I.V.E. with 32fs & 22bit resolution」、http://d.hatena.ne.jp/tma1/20070105
[23]アナログーデジタル変換、橋本研也、http://www.te.chiba-u.jp/~ken/lecture/Trans-3.pdf
[24]高速化に適した周波数変調方式刄ーADC、前澤宏一、松原渉、酒向万里生、水谷孝、http://www3.u-toyama.ac.jp/maezawa/Research/IPArev2.pdf
[25]AD/DA変換器とディジタルフィルタ、山崎芳男、日本音響学会誌 46巻 3号:1990、https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasj/46/3/46_KJ00001455904/_pdf/-char/ja
[26]デジタルとアナログの協調と共存、小林春夫、https://kobaweb.ei.st.gunma-u.ac.jp/news/pdf/koba20071016-2.pdf [27]AD/DA変換器、岩田穆、集積回路基礎 第10章、http://www.dsl.hiroshima-u.ac.jp/~iwa/text/LB10.ADC.pdf
[28]SL-P70仕様、https://audio-heritage.jp/TECHNICS/player/sl-p70.html
[29]アナログ・デジタル変換の基礎、村口正弘、マイクロ波工学2009.07.10
[30]1ビットD/A変換アレイを用いたD/A変換方式、谷泰範、信学技報、CAS94-9,VLD94-9,DSP94-31、pp.63-70
[31]ONKYO Integra C-1E解説、https://audio-heritage.jp/ONKYO/player/integrac-1ever2.html
[32]Victor XL-Z900、https://audio-heritage.jp/VICTOR/player/xl-z900.html
[33]SONY DAS-R1a、http://audio-heritage.jp/SONY-ESPRIT/etc/das-r1a.html
[34]Leica a la carte:SONY CDP-EX700、http://m3leica.blog66.fc2.com/blog-entry-556.html
[35]Sony CDP-710、https://www.hifiengine.com/manual_library/sony/cdp-710.shtml#comment-29462
[36]1ビットDACとR-2R DACの音質差 -- 名チップ PCM56、https://ameblo.jp/etsuo-okuda/entry-10479409645.html
[37]DACが16bitで何が悪い!、ステレオ時代、ネコ・パブリッシング、vol.21 pp.85-95
[38]CDの16ビットデータを20ビット化するビット拡張技術のしくみと効果[前編]、柴崎功、MJ無線と実験、誠文堂新光社、2008年8月号(第95巻 第8号 通巻1026号)、pp.84-94
[39]CDの16ビットデータを20ビット化するビット拡張技術のしくみと効果[中編]、柴崎功、MJ無線と実験、誠文堂新光社、2008年9月号(第95巻 第9号 通巻1027号)、pp.84-93
[40]CDの16ビットデータを20ビット化するビット拡張技術のしくみと効果[後編]、柴崎功、MJ無線と実験、誠文堂新光社、2008年10月号(第95巻 第10号 通巻1028号)、pp.84-92
[41]素子再生音に革命をもたらしたフルエンシーフィルター、柴崎功、MJ無線と実験、誠文堂新光社、2009年4月号(第96巻 第4号 通巻1034号)、pp.84-93
[42]ヤマハプロビット方式CDプレーヤーの詳細、柴崎功、MJ無線と実験、誠文堂新光社、1996年9月号(第83巻 第9号 通巻883号)、pp.94-101

Return