CDX-890


CDX-890
YAMAHA CDX-890

 国連からの地球沸騰化発言が話題となった酷暑の中、レコード再生や数十年ぶりのカセットテープ再生と併せて初期マルチビットDACの比較試聴を繰り返していたが、最終的には K2 プロセッシング搭載機に落ち着いてしまう事が多かった。先達の方によると[38][39][40][41]、DACのビット拡張技術には「CDの16ビット情報に正弦波近似やフィルタリング処理で下位データを生成して滑らかな20ビット信号にする【美音化】タイプと、CDの16ビット量子化前の手がかりを元に補正値を生成して原音に近づける【原音追求】タイプがある」、前者は「D.R.I.V.E.」や「ALPHA」、後者は「K2 プロセッシング」や「PRO-BIT」[38][42]との解説である。折り返し雑音を付加していると考えられる「LEGATO」やフルーエンシDAC も前者に属し、ハイパーソニック効果を利用して、超音波付加により「人間が聴覚的に高忠実度っぽく感じる再生」となっているとの指摘[41]である。一方後者は「22kHzという帯域内でのデータ的な高忠実度再生」[41]を追求している。我が駄耳がDAC比較試聴で最終的に K2 プロセッシング に落ち着いてしまうのは、ここいら辺に遠因があるのかも知れない。フルーエンシDAC や PRO-BIT(YAMAHA)[38][42]も試聴せねばとの思いが募ってきた中、「電源は入りましたがCDを入れても読み込みしませんでした。」との YAMAHA PRO-BIT 機 CDX-890 が9コインでやって来た。

 光ピックアップの不調も考えられたので別途 KSS-212A を発注しつつ動作確認すると、確かにCDチャッキング後のTOC読み込みが不調だが、トレー出し入れを繰り返しているとたまに正常に読み込む事もある。一旦TOCを正常に読み込むと再生は問題無く、曲のスキップなども反応する。この事から光ピックアップは問題無いと判断。先達情報ではトレー開閉ベルト交換事例もあるようで、チャッキング時に最後の一締めが緩いかも知れないと早速点検、ベルトは一見問題無い様に見受けられたが念のため在庫同等品と交換すると、CD読み込み時の不安定は解消された。その後ゴシゴシと綺麗にしていざ試聴。

 半日ほど20曲は入っているCDをリピート再生した後、定番 Everything Must Change のJAZZボーカルCDと常用リファレンスバイオリン曲CDによる試聴。これまでのDAC比較試聴機のいずれもが野太い音場、楽曲音だったのかとの思いの中、ピアノはピアノらしく、バイオリンはバイオリンらしく、纏わり付く音無くピュアな楽器そのものの音を奏でている。線が細いと云うよりは、一皮剥けた音場。最近は定番に加えて、セルゲイ・ドガージンのバイオリン演奏の放映を録音CD化したものでも比較試聴していたが、別掲 AVENSIS(プロジェクト主査が謡曲を嗜み、オーディオマニアとの情報あり)で聴くバイオリンに勝る音場を感じる事が無く、それ故このCDは1枚通して最後まで聴いた事がなかった。今回は納得のゆく音場に浸りながら最後まで楽しむ事が出来た次第。


悦楽の思い

 「レコード再生や数十年ぶりのカセットテープ再生と併せて初期マルチビットDACの比較試聴を繰り返していたが、最終的には K2 プロセッシング搭載機(XL-Z505)に落ち着いてしまう事が多かった。」と述べたが、前述 FR-155GX (VLSC)での所感、「VLSC はDA変換によりパルス性ノイズが含まれている信号を、ベクトル発生器を用いてパルス性ノイズを含まない信号として再生成するもので、フェーズロックループを一種のローパスフィルタ的に機能させており、このことがアナログのレコードの様に何のストレスもなくスーっと耳に入ってくる音場を醸し出すのかも知れない。」に通じる音造りされていないアナログ録音的な印象がある。加えて今回の「PRO-BIT」である。
 別掲レコードプレーヤー SL-5 で述べた所感『レコードは「高域がすなおで伸びやか、かつ低域が芳醇ではなかったか」との思いに加え、ボーカルの歌い出しの瞬間や終わって息継ぎする瞬間に明かな差があると感じられる。CDでは歌い出しが唐突、息継ぎに入る時はストンと無音になる印象となった。(比較試聴CDプレーヤーはマルチビットレガートリンク機)』であるが、1ビットDACの場合はディジタルゼロがある個数以上連続すると、1ビットDACが小さな発振を起こしてノイズを出す問題をカモフラージュする為に、アナログ出力にミューティングを掛けてノイズを出さない仕掛けをしている[42]との話しもあり、要調査ではあるがマルチビット機と云えどもミューティングを掛ける仕組みが組み込まれている可能性もあり得る。
 CDの場合、サンプリングされたが故に再生機器(DAC)側で正弦波近似やフィルタリング処理による下位データの生成等、いかようにも音造り(ディジタル処理)[38][39][40][41][42]されてしまうのではないかとの思いである。

 国連からの地球沸騰化発言がなされた現時点では、スピーカーは真空管時代の劇場用天井スピーカーを生い立ちとする高能率の素っ気ない同軸コーン型、CDプレーヤーは K2 プロセッシング機と PRO-BIT 機、アンプは高ダンピングファクタ機に落ち着いている。残るはフルーエンシか。このフルーエンシ、情報理論の具現化(チップ化)時点でスプライン次数が低次に限定され、結果スローロールオフ型フィルター機的な動作となり折り返しノイズ付加型動作となっている様である[41]。謂わば「LEGATO」の仲間とも思われ、興味が尽きない。フルーエンシチップは一昔以上前に入手済みであるが組み込むに至っていない。ケースやら、電源回りやら、小物パーツやらを初めから手がける気力も萎えており、ここは別掲 DAC63S-mini のDAC基板のみの入れ換えで済まそうかと考えている所である。


[1]tsdoctor HOME PAGE、https://tsdoctor.web.fc2.com/dp1001.htm
[2]Philips DAC、http://www.lampizator.eu/lampizator/LINKS%20AND%20DOWNLOADS/DATAMINING/tda1547.pdf
[3]お気楽オーディオキット資料館、http://www.easyaudiokit.com/
[4]DAC63S-mini/お気楽DAC2の製作、http://yasu-audio.com/dac63s_01.html
[5]DAC(DAC63S-mini)、http://www.geocities.jp/mkttid/dac63s.html
[6]フルーエンシ情報理論、http://www.jst.go.jp/kisoken/seika/zensen/04toraichi/
[7]EMISUKEの電子工作部屋、http://www.geocities.jp/aaa84250/HAIFU_16.htm
[8]Chu Moyタイプヘッドホンアンプの製作、http://www.minor-audio.com/bibou/amp/headphone_amp2004.html
[9]Web2.0が面白いほどわかる本、小川宏・後藤康成著、中経出版、中経の文庫495
[10]Pioneer レガートリンク解説、https://jpn.pioneer/ja/carrozzeria/archives/products/highend/lineup/rs-a1x2/function_2.html
[11]レガートリンク付きCDプレーヤについての検討(その2)、https://blogs.yahoo.co.jp/kiyo19371122/29056796.html
[12]折り返し雑音とフィルタ、http://www.gem.hi-ho.ne.jp/katsu-san/audio/next_gen/alias/aliasing.html
[13]サンプリング周波数と音質、http://aok.la.coocan.jp/sample_hz.htm
[14]お手軽シリーズ1.5の巻き、http://www20.tok2.com/home/easyaudiokit/okiraku/okiraku15.html
[15]「在庫限り」の誘惑に負けるの巻き(FN1242A)、http://www20.tok2.com/home/easyaudiokit/FN1242A/FN1242A.html
[16]心理学的,及び生理学的実験による超音波音響信号の知覚に関する考察、杉本武士、筑波大学大学院博士課程システム情報工学研究科修士論文、2003
[17]AL24 Processing、https://www.denon.jp/jp/blog/3817/index.html
[18]ONKYO 技術情報VLSC、https://www.jp.onkyo.com/audiovisual/technology/
[19]ビクター K2 テクノロジー技術情報、https://www.jvcmusic.co.jp/k2technology/aboutk2/technology.html
[20]二次元アレイスピーカを使った音場の形成とそのシュミレーション、http://tamlab.yz.yamagata-u.ac.jp/STUDY/スピーカ/speaker.html
[21]「Supreme D.R.I.V.E.(仮称)」開発!、http://www.kenwood.co.jp/newsrelease/2000/press20000619.html
[22]「D.R.I.V.E. with 32fs & 22bit resolution」、http://d.hatena.ne.jp/tma1/20070105
[23]アナログーデジタル変換、橋本研也、http://www.te.chiba-u.jp/~ken/lecture/Trans-3.pdf
[24]高速化に適した周波数変調方式刄ーADC、前澤宏一、松原渉、酒向万里生、水谷孝、http://www3.u-toyama.ac.jp/maezawa/Research/IPArev2.pdf
[25]AD/DA変換器とディジタルフィルタ、山崎芳男、日本音響学会誌 46巻 3号:1990、https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasj/46/3/46_KJ00001455904/_pdf/-char/ja
[26]デジタルとアナログの協調と共存、小林春夫、https://kobaweb.ei.st.gunma-u.ac.jp/news/pdf/koba20071016-2.pdf [27]AD/DA変換器、岩田穆、集積回路基礎 第10章、http://www.dsl.hiroshima-u.ac.jp/~iwa/text/LB10.ADC.pdf
[28]SL-P70仕様、https://audio-heritage.jp/TECHNICS/player/sl-p70.html
[29]アナログ・デジタル変換の基礎、村口正弘、マイクロ波工学2009.07.10
[30]1ビットD/A変換アレイを用いたD/A変換方式、谷泰範、信学技報、CAS94-9,VLD94-9,DSP94-31、pp.63-70
[31]ONKYO Integra C-1E解説、https://audio-heritage.jp/ONKYO/player/integrac-1ever2.html
[32]Victor XL-Z900、https://audio-heritage.jp/VICTOR/player/xl-z900.html
[33]SONY DAS-R1a、http://audio-heritage.jp/SONY-ESPRIT/etc/das-r1a.html
[34]Leica a la carte:SONY CDP-EX700、http://m3leica.blog66.fc2.com/blog-entry-556.html
[35]Sony CDP-710、https://www.hifiengine.com/manual_library/sony/cdp-710.shtml#comment-29462
[36]1ビットDACとR-2R DACの音質差 -- 名チップ PCM56、https://ameblo.jp/etsuo-okuda/entry-10479409645.html
[37]DACが16bitで何が悪い!、ステレオ時代、ネコ・パブリッシング、vol.21 pp.85-95
[38]CDの16ビットデータを20ビット化するビット拡張技術のしくみと効果[前編]、柴崎功、MJ無線と実験、誠文堂新光社、2008年8月号(第95巻 第8号 通巻1026号)、pp.84-94
[39]CDの16ビットデータを20ビット化するビット拡張技術のしくみと効果[中編]、柴崎功、MJ無線と実験、誠文堂新光社、2008年9月号(第95巻 第9号 通巻1027号)、pp.84-93
[40]CDの16ビットデータを20ビット化するビット拡張技術のしくみと効果[後編]、柴崎功、MJ無線と実験、誠文堂新光社、2008年10月号(第95巻 第10号 通巻1028号)、pp.84-92
[41]素子再生音に革命をもたらしたフルエンシーフィルター、柴崎功、MJ無線と実験、誠文堂新光社、2009年4月号(第96巻 第4号 通巻1034号)、pp.84-93
[42]ヤマハプロビット方式CDプレーヤーの詳細、柴崎功、MJ無線と実験、誠文堂新光社、1996年9月号(第83巻 第9号 通巻883号)、pp.94-101

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